銀行の勘定系システムにパブリッククラウドが採用される日はいつか――。巨大な業務システムのクラウド化の象徴的な動きだが、銀行のデジタルトランスフォーメーション(DX)から言えば核心ではないようだ。
ふくおかFGが新ネット銀行の構築基盤にGCPを採用
「今回の話で注目すべき点は、パブリッククラウドが銀行の勘定系システムに日本で初めて採用されたことだ」――。グーグル・クラウド・ジャパン代表の阿部伸一氏は、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、ふくおかFG)と同社が共同で開いた記者説明会でこう強調した。会見には、福岡銀行取締役副頭取でふくおかFG取締役執行役員の横田浩二氏も同席した。
右から、福岡銀行取締役副頭取でふくおかFG取締役執行役員の横田浩二氏、グーグル・クラウド・ジャパン代表の阿部伸一氏
阿部氏が言う「今回の話」とは、福岡銀行など九州地域の4銀行を傘下に持つふくおかFGが、2020年度に創業予定のインターネット専業銀行「みんなの銀行」の勘定系システムの構築基盤に「Google Cloud Platform」(GCP)を採用すると決めたことだ。
阿部氏の発言に間違いはないが、銀行の勘定系システムにパブリッククラウドが採用されるという動きがこれまで注目されてきたのは、銀行がこれまで独自に作り込んできた既存システムの移行を対象にした話が一般的なので、少々違和感があった。
ただ、阿部氏は冒頭の発言に続けて、もう1つ注目すべき点があるとして「今回の話は銀行のあり方におけるパラダイムシフトの先陣を切っていることだ」と話した。これを聞いた筆者は、実は銀行にとっては、既存の勘定系システムのクラウドへの移行より、銀行そのもののパラダイムシフトのほうが遥かに重要な話ではないかと感じた。
「今回の話」については9月24日に両社からすでに発表されており、会見は横田氏と阿部氏がそろって内容の説明に立った形だ。
ふくおかFGは、みんなの銀行の勘定系システムの構築基盤にGCPを採用したことについて、発表リリースで次のように記している。
「拡張性に優れたGCP上に勘定系システムを構築することで、システム運用コストの最適化を図るとともに、金融機能ごとにサービスを切り出すマイクロサービスの稼働にも適していることから、柔軟かつ迅速な商品・サービスの開発・提供が可能になる。また、新銀行の金融機能や商品などを、APIを通じてさまざまな事業者にサービスとして提供する『BaaS(Banking as a Service)型ビジネス』の実現にも適している」