本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズのDave West 代表執行役員社長と、Tableau Japanの佐藤豊 社長の発言を紹介する。
「ハード中心から“ハード+ソフト”のベンダーに変わってきた」
(シスコシステムズ Dave West 代表執行役員社長)
シスコシステムズのDave West代表執行役員社長
シスコシステムズが先頃、2020年度(2020年7月期)の事業戦略について記者説明会を開いた。West氏の冒頭の発言は、その会見の質疑応答で、同社の事業内容の変化について聞いた筆者の質問に答えたものである。
West氏が説明した同社の2020年度の重点戦略は、「お客さまやパートナーの関係性を一層深化させる」「日本のデジタイゼーションを推進する」「ライフサイクル全体のエクスペリエンスを追求する」の3つ。それぞれの中身は図に示した通りで、表現の仕方が異なっているところもあるが、大きな観点では2019年度(2019年7月期)の重点戦略を引き継いでいる。
シスコシステムズの2020年度の重点戦略
会見では、West氏が全体の事業戦略、代表執行役員会長の鈴木和洋氏が新たな投資プログラム、副社長 情報通信産業事業統括の中川いち朗氏がサービスプロバイダー向け事業戦略、執行役員SMB・デジタル事業統括兼東京2020マーケティング担当の鎌田道子氏が中小企業向け事業戦略を説明した。
会見全体の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではWest氏の冒頭の発言に注目したい。
会見の質疑応答で筆者が聞いた質問の意図は、「ICT市場が大きく変化している中で、これまでネットワーク機器を中心に事業を展開してきたシスコの事業内容も変化してきているのではないか」というものだ。これに対し、West氏は次のように答えた。
「まず、対象となる顧客市場でいえば、従来のエンタープライズ(大手企業)やコマーシャル(一般企業)、官公庁に加えて、ここ数年は新たに中小企業向けにも注力している」
そして、事業内容の変化については次のように語った。
「ハード中心から“ハード+ソフト”のベンダーに変わってきた。さらに、それらをサービスとして提供する形も増えてきている。そのために今、事業全体を整備し直しているところだ。さらに、日本ではそれらをローカライズする必要がある。こうして当社もたゆまずビジネストランスフォーメーションを推進している」
冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。同氏の回答は予想の範囲だったが、2019年度のグローバル売上高で517億ドル(約5兆6000億円)を記録した同社の事業内容がどのように変化しているかは、ICT業界でも高い関心事ではないかと考える。従って、今後の事業戦略の会見では、こうした事業内容の変化、つまりはシスコの進化についてもぜひ説明していただきたい。
会見で説明と質疑応答に応じたWest氏およびシスコシステムズの幹部