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“真FinTech” 地域金融の行方

「地域創生=中小企業の金融支援」と考える金融機関の経営者

萩原栄幸

2019-10-25 06:00

 山陰地方にある金融機関でのこと、経営者は焦っていました。予想以上に収益が出ず、貸し出しが振るわないのが主因であることは明白でした。その他も利益が出にくい状況なので仕方がなかったのです。昔なら国債との金利差でそこそこの利益もありましたが、今はそんな“打ち出の小槌”がありません。投資信託の手数料も今の環境では積極的に富裕層へ購入を持ち掛けられません。日本郵政グループの問題も金融全体の問題として不安が広がってしまったからでした。

 そうしたこともあり、この金融機関ではその地域全体を再調査し、事業拡大を考えている地域の中堅企業にアタックするように指示を出していたのです。政府も地域創生を重視してこの低金利を活用し、さまざまな資金需要に対応できるように金融機関に求めてきました。金融機関の本店は、支店に「支店長自らが営業マンとして動け! 窓口担当も知り合いや親せきに働きかけるように!」とハッパをかけていたのです。

 ですが、市の名前の冠を持つ駅前ですら半分がシャッター街となっているところもあり、そのような思惑は無理とは言わないまでも、かなり難しい課題でした。ましてや、限界集落から消滅集落へ転落しつつあるエリアの拡大が地方の金融期間を疲弊させている要因の1つになっていることは間違いありません。

 “モラトリアム法”と呼ばれる2009年に成立した「中小企業金融円滑化法」は、金融機関が融資先に対する返済猶予や金利減免などの債務返済の繰り延べを認めて、中小企業の返済負担を軽減するものでした。しかし、その承諾の判断はあくまで金融機関に委ねられており、金融庁が金融機関に実行件数の報告義務を課したことで、融資先が赤字でも金融機関は承諾せざるを得なかったようでした。同法の実行率は約95%。つまり金融機関は、ほぼ無条件で要請に応じてきたのです。

 この金融円滑化法は2013年3月末で終了したものの、その後も金融庁が金融機関に任意で実行報告を求めたことによって、同法は消滅したにも関わらず実質的に継続されました。法的根拠を失ったにもかかわらず、終了後でも債務返済の繰り延べの申し込みはなんと500万件を超え、実行率は9割を超えました。

 私は、本来なら安楽死をさせるべき企業が一時的に融資を受け(そのまま頑張って正常先になればいいのですが、そんな訳はありません)、数年先により状況を悪化させ、経営者や取引先、従業員、そして金融機関の全方位で負のスパイラルをさらに深くし、地域経済に数段の深い傷を負わせることになったと分析しています。

 ある金融機関では、同法によるリスケジュールの結果、対象となる融資先企業の半数で業績が改善しなかったといいます。一部の企業にとっては「救いの水」になったかもしれませんが、約半数の企業はより深い地獄を見ることになったのです。

(金融円滑化法以前に清算していれば)

経営者:もっと資産が残っていたかも

従業員:退職金が満額貰え、再就職先もあっせんが容易だったかも

取引先:委託先への円滑な委譲や外注先の選別をもっと多様にでき、焦げ付きが今より減少していたかも

金融機関:回収不能な債権がもっと少なかったかも

 しかも、これは現在進行形であり、もう少し状況を見守る必要があります。実際、2019年上半期は倒産件数が前年同期より約25%も増加し、不気味さを感じます。

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