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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国が目指す国際インターネットの姿とは

山谷剛史

2019-10-28 07:00

 中国浙江省の烏鎮で「世界インターネット大会」というイベントが、年の後半に開催される。2014年の初回以降、年に1度開催され、2019年は6回目を数える。初回は「世界インターネット大会」という名前のインパクトに加え、世界各国から要人が集まるということで、中国国内のメディアも期待値は高かった。世界から要人が来るならば、中国でかかっている強力なネット規制も一時的に解除されるのではないか、そんな期待がされていた。

 しかし、会場内限定でネット規制が解除されたという報道があったことを最後に、2回目以降はそうした報道がなくなった。また当初触れ込みにあった世界各国から要人がやって来るという話も、主にアフリカ地域から訪中するというもので、中国の「ネット主権」の方針に協賛するというものであった。当時のワクワク感と比べ、蓋を開けてみれば肩透かしだった。あまつさえ中国では、ほぼほぼ中国企業だけが参加する「世界IoT大会」「世界AI大会」など「世界」を冠したイベントが多数開催されるようになった。「ネット規制解除なるか」という報道がなくなったのは、おそらく1回目が開催された結果、あるいはさまざまな「中国~大会」が開催された結果、中国と米国主導のネットとの融合は起きることはないだろうと、期待されなくなったというのが正解だろう。

 結果として世界インターネット大会では、中国を代表するネット企業が集まる場となり、中国の最新テクノロジーをアピールする場となっている。また自国のネット環境は自国が管理するという「ネット主権」を一貫して訴えている。2014年の1回目から2019年の6回目までは、以下のようなテーマを掲げている。

  • 1回目(2014年):互いにつながり通じ、ともに治める
  • 2回目(2015年):互いにつながり通じ、ともに治める
  • 3回目(2016年):クリエイティブを加速させ人類を幸福に
  • 4回目(2017年):デジタル経済を発展させ、シェアを進めよう
  • 5回目(2018年):ともに信じ、ともに治めるデジタル世界を作ろう
  • 6回目(2019年):スマートにつながり、提携を進めよう

 このテーマの後に、毎回「共同ネットワーク空間の運命共同体を作ろう」という言葉を付け加えている。中国でも屈指のネット系イベントであるため、政府の方針とつながっていると考えるのが自然だ。

 標語が変化しだしたのは2016年からだが、例えばシェアサイクルが話題になった2017年には「シェアを進めよう」という話になり、2018年にはネットに信用を導入しようとする動きから「信」の字が標語に付いた。2019年は5G(第5世代移動通信システム)元年として、さまざまな機器をスマートにつなげようということを念頭に置いたテーマとなっている。改めて中国のネット業界は毎年変化が起きているのを、こうしたイベントからもつかむことができる。

 ところで毎年ブレないのが前述の「ネット主権」だ。今回はネット主権についての「ネット主権 理論と実践」という文書を発表している。中国が目指すインターネットと解釈することができよう。

ネット主権について

  • 「独立権」:各国がネットの管理の方法や政策を選べて外国の干渉は受け付けない
  • 「平等権」:各国が平等に国際ネット治安維持に参加でき、共同で規則を作れる
  • 「管轄権」:各国の立法、行政、司法がインターネットを管轄する。必要なときは他国に協力を求める
  • 「防衛権」:外国からの攻撃に防衛する権利がある

ネット主権行使の基本原則について

  • 「平等の原則」:いかなる国家も平等であり、ネット空間で平等である
  • 「公正の原則」:各国が公平で正義ある空間を維持すべく、公正で合理的な方向への発展を進める
  • 「提携の原則」:国連憲章の善意の提携の原則に基づき、協力してネットの治安維持に務める
  • 「平和の原則」:インターネットを平和的に利用する。ネット軍備の競い合いを防止し、ネットテロを防ぎ、平和的な環境構築に務める
  • 「法治の原則」:各国がネット関連法を立法し、国際化の法治化を進める。他国のネット主権を尊重し、国際法を順守し、ネットを利用して他国の内政干渉はしない

 というものとなっている。さらに文書の中で「中国は積極的に実践している」とした上で、各国が「ネット主権」やその「基本原則」に則って、インターネットを共同で発展させるべきだとしている。また文章では「インターネットを分裂させるわけでもなく、閉じるわけでもない」とも書かれている。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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