Microsoft主催のイベント「Ignite」の基調講演では、データサービスやアナリティクスに関するニュースが数多く発表された。筆者はすでに、米ZDNetで「Azure Synapse Analytics」、「SQL Server 2019」の一般提供開始、「Power BI」のデータ保護に関する新機能についての記事を書いた。しかし、データサービスやアナリティクスに関する発表は、ほかにも大量にあった。
クラウドデータベースをどこでも利用できる「Azure data services anywhere」
米国時間11月4日に発表されたその他のニュースの中でもっとも重要なのは、「Azure Arc」のリリースだろう。この技術は、「Azureのサービスをどこにでも展開し、Azureの管理の仕組みをあらゆるインフラに拡大することを可能にする」ものだ。またMicrosoftは、Azure Arc関連のデータサービスに関する内容の1つとして、「Azure data services anywhere」を発表した。この機能は、「Azure SQL Database」と「Azure Database for PostgreSQL Hyperscale」の両方を、オンプレミスやその他のあらゆるインフラで実行することを可能にする。Azure data services anywhereはArcをベースにしているため、これらのデータベースのすべてのリソースの管理は、「Azure Portal」が提供する統合された管理環境から行うことができる。
Azure data services anywhereの実現には、Arcだけでなく「Kubernetes」も重要な役割を果たしているようだ。Kubernetesは、マルチクラウドやハイブリッドクラウドを可能にする技術として業界全体に広がりつつあるが、その働きは双方向的だ。Kubernetesを使うことで、上述のクラウドネイティブな2つのデータベースがオンプレミスやほかのパブリッククラウドで利用できるようなるのと同じように、オンプレミスのSQL Server 2019の「ビッグデータクラスター」も、クラウドで「Azure Kubernetes Services」(AKS)やその他のKubernetesサービス上に展開できるようになる。Kubernetesを利用したハイブリッドクラウドで可能になるのは、オンプレミスソフトウェアをクラウド上のIaaSの仮想マシンで実行することだけではない。クラウドのマネージドサービスを、オンプレミスやほかのパブリッククラウドプラットフォームで実行することも可能になりつつある。
Microsoftは今後、これら2つのデータベース以外のサービスも、Azure data services anywhereで利用できるようにするとしている。従っていずれは、「Azure HDInsight」(HDI)も利用できるようになるかもしれない。HDIは、「Apache Hadoop」や「Apache Spark」などをはじめとするオープンソースのアナリティクスエンジンやフレームワークを利用するためのマネージドサービスだ。Arcが「Google Anthos」に似ていることを考えれば、HDIがAzure data services anywhereで利用できるようになっても不思議はない。Google CloudのJames Malone氏は筆者に、Google Anthosを使って、「Google Kubernetes Engine」(GKE)以外のKubernetesサービスでも、「Cloud Dataproc」(Google Cloudが提供するHDIに相当するサービス)を動かせるようにするかもしれないと話してくれたことがある。