テクノロジーが生活のあらゆる側面に入り込むにつれて、電子投票に対する関心も高まってきた。推進派によれば、電子投票は投票の安全性を高め、開票時間を短縮するからだ。
電子投票へのシフトは、紙のプロセスを現代風にアップデートするだけだと思うかもしれないが、そう単純ではない。
セキュリティ研究者たちは、米国各地で使用されている電子投票機に多くの脆弱性を発見してきた。また、携帯アプリを利用した投票には、有権者の本人確認や選挙不正に関する懸念がつきまとう。そこで解決策として、ブロックチェーンを用いた投票を提案する者が現れた。
ブロックチェーンとは分散型台帳技術とも呼ばれ、取引を関係者全員の合意がなければ変更できないような方法で記録する技術だ。ブロックチェーンを利用すれば、電子投票の改ざんははるかに困難になると推進派は主張する。
ブロックチェーンの用途として、最も有名なのはビットコイン取引だが、医療記録の保管や物理的取引の認証といった領域でも、ブロックチェーンの導入実験が実施されている。
2017~2018年には、選挙システムにブロックチェーンを活用する実験が行われた事例が複数あった。結果はさまざまだったが、過去1年間を通じて、世界中の国の政府や地方自治体がブロックチェーン技術の実験に取り組んできたことは間違いない。
「クリプトバレー」として知られるスイスのツーク市では、2018年夏にブロックチェーンを用いた電子投票が試験的に実施され、有効な電子デジタルIDを持つ220人の有権者が、LuxoftとHochschule LuzernのBlockchain Labが構築したプラットフォーム上で票を投じた。
実験後にツーク市の住民にアンケートをとったところ、5人に4人が電子投票の導入を歓迎したものの、ブロックチェーンは電子投票のセキュリティを向上させるか、それとも新たな課題をもたらすかについては意見が分かれた。ブロックチェーン技術によって電子投票の安全性が高まると回答した市民は21%にとどまり、16%はセキュリティ面の懸念があると回答した。
また、多くの市民が電子投票がさらに進化するまでは、従来の郵便による投票も選択肢として残してほしいと回答した。
セキュリティ問題
ブロックチェーン投票の推進派は、ブロックチェーン技術の大きな利点として、改ざんやハッキングといった外部の干渉から電子投票を保護できる点を挙げる。しかし、ブロックチェーンを用いた投票システムにセキュリティ上の問題が発見された例は多い。