日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が実施する「企業IT動向調査」の最新結果(速報値)によれば、企業の7割がビジネスのデジタル化に着手し、業務プロセスなどの変革を進めていることが分かった。
同調査は、東証上場企業とそれに準じる4000社を対象に、1994年度から実施されている。最新調査は2019年9月13日~10月11日に行われ、有効回答は全体で970社。「ビジネスのデジタル化」は2016年度調査から加わったもので、今回は956社が回答した。
この調査で定義するビジネスのデジタル化は、「ITの進化により、さまざまなヒト・モノ・コトの情報がつながることで、競争優位性の高い新たなサービスやビジネスモデルを実現すること、プロセスの高度化を実現すること」とされる。調査では、ビジネスのデジタル化に取り組む企業が確実に増加していることが明らかになった。
ビジネスのデジタル化への取り組み状況(出典:日本情報システム・ユーザー協会)
まずビジネスのデジタル化の検討状況について、「商品・サービスのデジタル化(ビジネス自体の変革や商品・サービスの創造)」と「プロセスのデジタル化(業務プロセスの変革・自動化、状態の見える化、データ活用)」に分けて見てみると、いずれのデジタル化も「実施中」と回答した企業は、前回調査より2.0ポイント増えて22.1%に上った。「実施中」「検討中」とした企業は、「プロセスのデジタル化」では約7割、「商品・サービスのデジタル化」では約5割だった。
また、売上高の規模別では、1兆円以上の企業の66.7%がデジタル化に取り組み、「プロセスのデジタル化」では9割以上に達した。1000億~1兆円未満の企業でも「プロセスのデジタル化」は同様だった。一方、100億円未満の企業では「未実施」が4割を超え、規模による取り組み状況の差が鮮明になってきているという。
今回の調査でJUASは、実施レベルを下表の3段階で定義し、回答企業の実施レベルの状況を分析している。
実施レベルの定義(出典:日本情報システム・ユーザー協会)
それによれば、「商品・サービスのデジタル化」の実施レベルは、売上高が小さいほど単純自動化の割合が高く、売上高が大きいほど創造・革新の割合が高かった。「プロセスのデジタル化」も似た状況だが、創造・革新レベルについては実施レベルの差はほとんど見られなかった。
売上高別、商品・サービスのデジタル化の実施レベル(出典:日本情報システム・ユーザー協会)
売上高別、プロセスのデジタル化の実施レベル(出典:日本情報システム・ユーザー協会)
また、デジタル化の成果状況では、「期待以上の成果あり」「期待通りの成果あり」とした企業が、「商品・サービスのデジタル化」で約2割、「プロセスデジタル化」では約3割だった。上記の実施レベルが高い企業ほど期待する成果を得ていることも明らかになっている。「期待する成果は得られなかった」は5%程度だった。
JUASは、この調査の詳しい分析結果などを4月に公開する予定だ。