ところが、近年の通信事業者の売上は芳しくない。レポートによれば、通信事業者は大手IT企業と比べ成長率が低い。Apple、Amazon、Alphabetの売上高は、2010年以降1000億~2000億ドル(約11兆~22兆円)増えているが、モバイル通信事業者の売上高は停滞しているか、以前よりも成長が鈍化している。
通信事業者が生き残るためには、通信サービス以外にも収益の柱を見つける必要がある。レポートでは、有料テレビサービス、メディアおよびエンターテインメント事業、広告事業などへの進出を検討するよう提案している。
その一方でGSMAは、課題は多いものの、2034年までには5Gのグローバル経済に対する貢献は2兆2000億ドル(約240兆円)に達すると予想している。予想される主なユースケースは、自動運転車やスマートマニュファクチャリングなどの新たな分野だ。
低遅延・超高速の接続は、ロボットや製造プロセスの遠隔からのリアルタイム監視から、5Gを利用した拡張現実(AR)のシミュレーションによる、労働者のトレーニングや生産性の向上まで、さまざまな面で工場の現場に革命を起こす。
レポートでは、「スマートマニュファクチャリングの究極の目標は、自律的に制御される工場だ」と述べている。スマートな工場で得られるメリットを示す先駆けとなった事例が、中国CHANGYING Precision Technology Companyが運営するスマートフォン工場だ。数年前に開設されたこの工場では、人間の労働者の90%が、24時間稼働する60台のロボットアームに取って代わられた。その結果は申し分ないものだった。自動化によって生産性は250%向上し、不具合は80%減少したという。
GSMAは、同様の結果を大規模に実現するためには、業界と政府が協力しながら取り組みを進める必要があると強調している。レポートでは、より早く、効率的に5Gを展開できるような政府の政策が必要であると述べ、例の1つとして用地取得に関する計画立案手続きや規制を簡素化、標準化することを挙げている。
また70%近くの通信事業者が、5Gに対する計画的な投資を妨げている最大の要因は、無線周波数帯へのアクセスが制限されていることだと述べているという。したがって政府は、通信事業者がネットワークの運用に必要な周波数にアクセスしやすくする必要がある。
周波数の割り当ては、限られた資源であると見なされている周波数の取得に莫大な金額が必要な欧州では、大きな問題だ。GSMAが示した5Gの普及ペースに関する予想に、地域によって大きなばらつきがある理由の一部には、欧州の政策が障害になっていることもあるのかもしれない。GSMAは、2025年には北米と中国では約半数のモバイル接続が5Gになる一方で、欧州での普及率は34%にとどまると予想している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。