本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、4月1日付で富士通の執行役員常務 CIO兼CDXO補佐に就任する福田譲氏と、同じく同社の理事CMOに就任する山本多絵子氏の発言を紹介する。
「富士通なき日本のDXは考えられない」
(富士通の執行役員常務 CIO兼CDXO補佐に4月1日付で就任する福田譲氏)
富士通の執行役員常務 CIO兼CDXO補佐に4月1日付で就任する福田譲氏
富士通が先頃、「デジタルトランスフォーメーション(DX)への変革に向けた取り組み」について記者会見を開いた。4月1日付で同社の 執行役員常務 CIO(最高情報責任者)兼CDXO(最高DX責任者)補佐に就任する予定の福田氏はその会見で、同社社長の時田隆仁氏から紹介されて登壇し、挨拶した。冒頭の発言はその中で、富士通入りする動機の根本について述べたものである。(関連記事1、関連記事2)
福田氏は1997年にSAPジャパンに新卒入社し、これまで23年間にわたって勤務。2007年からバイスプレジデントを歴任し、2014年7月から代表取締役社長を務めてきた。SAPジャパンにとって富士通は、強力なビジネスパートナーであり、非常に重要な顧客でもある。
富士通の時田氏は福田氏について、「私から改めて紹介するまでもないが、企業システムの高度化における第一人者だ。富士通では業務プロセスからカルチャーなどを含めて全面的な見直しに携わり、社内のDX化を牽引してもらいたい」と語った。
福田氏はあいさつで、「DXとは、ビジネスのルールが変わり、業種の垣根がなくなっていく中で、個々の企業が自らの存在意義を今一度問い直して、新たな時代のビジネスモデルを再構築していくという、経営のイニシアチブだと考えている」と持論を説明。そして、こう述べた。
「これまで10年間、私たちの日々の活動において、とくに午後5時から翌日午前9時の間のライフスタイルは、スマートフォンをはじめとしたモバイルデバイスを利用することで大きく変わった。さらに、これからの10年で大きく変わるのは、午前9時から午後5時の間のビジネススタイルであり、ワークスタイルだと考えている」
現在はそうした転換点にあり、今後の変化に向けた最大のキーワードがDXだというのが、福田氏の認識のようだ。その上で、次のように語った。
「そうした中で、日本を代表するICT企業の富士通自身が、デジタル時代の経営ビジョンやビジネスモデル、業務プロセス、働き方、あるいはAI(人工知能)やロボットと人との共生のあり方、データドリブンなビジネスの推進といったことを率先して世の中に示していく責務は非常に大きい。その意味で、富士通なき日本のDXは考えられないと、私は確信している」
「富士通なき日本のDXは考えられない」というのは、同社がそれだけ大きな存在であることを示しているが、福田氏がこう表現したのは「富士通がDX企業になれなければ、日本のDXにも将来はない」との強い危機感からだろう。同氏の新たな挑戦に引き続き注目していきたい。
会見に登壇した外部登用の富士通幹部3人。右から、福田氏、本稿後半で紹介する山本氏、3月1日付で理事M&A戦略担当に就任したNichlas Fraser氏(McKinsey & Companyより移籍)