富士通のデジタルトランスフォーメーション(DX)企業への挑戦が成功する決め手は何か。同社の記者会見で、筆者は単刀直入にこう聞いた。時田隆仁社長はどう答えたか。
富士通が目指すDXビジネスとは
「富士通では今、IT企業からDX企業への変革のため、ビジネス、業務プロセス、カルチャーまでも大きく見直しを図っている。この会見では、その中でも最も重要な要素である“人”についてお話ししたい」――。
記者会見に臨む富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏
富士通が先頃開いた「DX企業への変革に向けた取り組み」をテーマとした記者会見で、時田氏はこう切り出した。この取り組みにおいては、既に外部から複数の人材を幹部に迎え入れることを発表しており、そのお披露目がこの会見の主な目的の1つだったので、同氏の冒頭の発言に何ら違和感はない。ただ、「人」という言葉が筆者の耳に強く残った(写真1)。
会見では、DXビジネスを牽引する新会社として4月から活動を開始する「RidgeLinez」の説明や、同社社長に就任する今井俊哉氏をはじめとして「変革をドライブする新たな仲間」(時田氏)となる幹部らが紹介された。その会見の模様については関連記事をご覧いただくとして、本稿では時田氏が冒頭で強調した「人」を念頭に置きながら、この会見のテーマについて率直に疑問を投げかける形で、「富士通のDX企業への挑戦が成功する決め手は何か」について探ってみたい。
まずは、時田氏の会見での説明から、DX企業への変革に向けた取り組みにおける基本的な考え方について、2枚の図を挙げて記しておこう。
図1は、富士通が目指すDXビジネスを描いたものである。同氏によると、「当社の強みはさまざまな先端テクノロジーと、強固な顧客基盤に支えられた業種・業務ノウハウの蓄積にある。その各種データをAI(人工知能)やIoTなどのテクノロジーに注入し、そこから新たな価値を創造して再びお客さまに提供する。このようにデータを還流させながらDXを実現する会社になることを目指している」という。
富士通が目指すDXビジネス