ドリコム(目黒区、従業員数367人)は、スマートフォン向けのソーシャルゲームを中心としたゲーム開発事業を展開している。特にキャラクターなどの知的財産(Intellectual Property:IP)系がメインで、「ダービースタリオン マスターズ(ダビスタ)」をはじめ、バンダイナムコグループと連携して開発した「ONE PIECEトレジャークルーズ」など、コンテンツを持つ外部と連携してリリースしたタイトルが多いのが特徴だ。
そのため、ゲームを開発する際には基本的に版権元との契約が発生する。また、最近のゲーム市場は数よりも品質志向で、開発期間が長期化。それに伴って、開発に携わる外部協力者との契約が都度発生し、現場から法務まで担当者にかかる負担は大きくなっていると、ドリコム 経営企画部 事業管理グループ グループ長の小林奨氏は業界の内部事情を説明する。
年間7200件の契約が発生
「当社では3社ほどの版権元と取引があり、その先に大手出版社などの大版元がいる。1本のゲームを開発する際の上流は4社くらいで、そのほかの外注先もかなり多い。イラストだけでも10~20社かかわっていて、業務委託のエンジニアも参加する。トータルで1つのゲームを作るのに30社くらいかかわっている」(小林氏)
小林奨氏
そして、契約はその分だけ発生する。「基本的に発注は毎月出す。発注書と検収書を毎月くり返すので、30社×2種類×12カ月。今は10タイトルくらいあって、単純計算で年間7200件くらいの契約が発生している」(小林氏)という状況となっている。
関連業務担当者5人のうち2人が離職
ドリコムにおける契約業務体制は、事業側の3人の庶務担当と、管理側2人の法務が中心。現場の営業や技術の担当者がテンプレートをもとに発注書や契約書を作り、先方と打ち合わせして原本を作成、事業部内の取りまとめ役に提出する。そこから庶務に渡し、法務の確認後、庶務から送付するという流れになっていた。
しかし、法務1人の産休とほぼ同時に、庶務1人の退職が決定するという状況に直面する。その状況を受けて社内の業務プロセス改革(BPR)を担当していた小林氏は、「人を入れても、キャッチアップするまでに時間がかかる。それならばシステムを入れて、見える化している状態で引き継いだほうがいい」と判断。契約の電子化の検討を開始した。2018年12月半ばの出来事であった。
当初は時間もなかったため、電子締結だけ電子化できればいいという考えだったが、社内の課題を整理し、締結部分だけでは問題解決にならないことを確信。
「もともと紙ベースでの契約業務には無理が生じていた。契約書類の管理、書類の承認などの大量の業務作業に加え、例えば法務部では急に今日中に処理してほしいといわれて帰宅後に会社に戻るようなこともあった。担当者、責任者ともに負担がかかっていた」(小林氏)のである。
従来のフローをほぼ変えずに電子化
デジタルツールとして4サービスを選定し、それぞれトライアルを実施した。そこで採用したのが、Holmesの契約マネジメントサービス「ホームズクラウド」である。
採用理由について小林氏は、「契約だけ点で見るのではなく、その前に作った契約内容やドキュメントを関係者にチェックしてもらえる機能を備え、締結後には各部署の権限に鍵をかけて保存できる。途中のプロセス、やりとりのコメントも残せてノウハウもたまる」と他サービスと比較した利点を説明する。
これにより、契約の前段階の書類の作成から承認までのフロー、実際の契約から契約後のファイル管理まで、社内の契約にかかわる工程を電子化し、統一プラットフォーム上でワンストップで行えるようになった。
従来のフローはほぼ変えず、社内にも顧客にも手間をかけることなく電子契約に移行できたと小林氏はいう。