IT部門の実施施策に対し、経営者、ユーザー部門などからの“自社”評価も調査。「既存システムの継続運用」に関しては、「良くできた」「ある程度できた」が7割を超え、一定の達成感があるという。全社の在宅勤務実施率に比例しており、「ほぼ全従業員」または「半数以上の従業員」が在宅勤務の企業では、8割以上が「良くできた」「ある程度できた」と回答している。
既存システムの継続運用に対するIT部門の実施施策への評価(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
在宅勤務などの勤務環境の変化がIT業務に与える影響として、「勤務実態が把握できず生産性低下」「IT操作の習熟度が低く、ウェブ会議などの実施が困難」など、7割がIT部門業務に支障が出たと回答したという。また、IT部門の在宅勤務率は2割程度。IT部門自体の働き方、マネジメント体制も課題としている。
IT部門の勤務環境と業務への支障(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
ITベンダーやコンサルティング企業に求めることを自由記述形式で聞いたところ、リモートアクセス環境の緊急整備に伴うネットワーク増強、障害対応などに多くの関心が集まったという。具体的な行動としては「一層のコミュニケーション」「迅速なレスポンス」へ高い期待があるとともに、アフターコロナを見据えた他社の対応事例、IT環境整備の提案なども見受けられたとしている。
ITベンダー・コンサルティング会社に求めること(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
ITR アナリスト統括ディレクターの金谷敏尊氏は、「事業機会が減少し、生産性が低下する経営環境の下、社員、顧客、取引先、地域社会における関係者の安全性の確保を最優先に考えなければならず、いかにして事業を存続させ、雇用を維持するか、経営者は難しい判断を求められている。マスク着用が短期間で当たり前になったように、リモートワークやデジタルワークが当たり前の世の中に急速にシフトしつつある。必ずしも投資活動やプロジェクトを一様に取り止めるのでなく、このダイナミックな環境変化へ適応するために知恵を絞り、必要な支出は継続していかなければならない。初動段階でのチャレンジのひとつは、リアルコミュニケーションの機会を失うなか、テクノロジーを駆使していかにビジネスを存続させるかにある。今後、世界的な経済危機により事業縮小、組織再編を余儀なくされる、あるいは産業自体が形を変えたり消失したりすることも考えられ、社会的価値観やビジネス規範がこれまでとは違ったものになる。存続へ向けた対策とともに、アフターコロナを見据えたビジネス戦略の視点から自らを変革することが求められている」とコメントしている。
主な影響とその対応策(出典:ITR)