「可視化→改善→成功」のサイクルを回す
こうした課題解決のためにクリエイトワンは、クラウド上に「顧客カルテ」とヘアサロン向け「サロンポータル」を構築した。すべての情報をSalesforceに集約して顧客カルテを作成。同時に、店舗運営に関する情報をヘアサロンが簡単に分析できる環境を整えた。
顧客カルテにはクリエイトワンの従業員全員が日々の活動記録を入力する。これにより、「誰が」「どのクライアントに」「どのようなアプローチをしているのか」が明確になる。金子氏は「Salesforceを見れば、入金漏れなどの情報がすぐに把握できる。すべての情報をSalesforceに集約したことで、エクステの売上情報だけでなく、請求書作成なども手間をかけずに実行できるようになった」と説明する。
一方、ヘアサロンには自社の活動情報をポータルサイトに入力してもらうようにした。複数のヘアサロンからのデータを集約、分析できる環境が整ったことで、新たなビジネスの領域も広がった。その一つがデータに基づいたコンサル事業の開始だ。データ分析によって売れているサロンの理由がわかるようになり、それを他のサロンにも水平展開できるようになった。
ヘアサロンにも大きな変化が起こった。ポータルサイトに各ヘアサロンが売り上げなどを入力することで、日々の売り上げやSalesforceの分析機能を活用した様々な指標が一目でわかるようになった。その結果、ヘアサロンの売り上げは堅調に増加し、同時にクリエイトワンに対するエクステの注文も増加したという。
金子氏は「ヘアサロンが分析データを目の当たりにしたことで、経営への意識が変わった。これまでヘアサロンの店長は職人気質で経営の意識が低いと思っていたが、それは間違っていた。情報(データ)がないから、どのように経営すればよいか悩んでいたのだ。そこにデータをもとにしたコンサルタントをすれば、成果はすぐに現れた」と説明する。
例えば家賃の適性価格や広告費の比率、時間あたりの売り上げや人件費の算出などを気にするようになった。そして、他店と比較し、自店の強みや改善ポイントを多角的に分析できるようになったという。
さらにこれまでファクスと電話で進めていた注文フローを、サイトから購入できるようにした。これにより、商品の欠品や過剰発注も防止できるようになった。金子氏は「将来的にはヘアサロンの在庫もSalesforceで管理し、足りなくなった賞品が自動的に発注できる仕組みを構築したい」と語る。
Safesforceにデータを集約し、クリエイトワン、ヘアサロン共にデータドリブンな経営が可能になった(出典:クリエイトワン)
とはいえ、すべてが順風満帆だったわけではない。当初はクリエイトワンの従業員もヘアサロンもSalesforceへの入力をしなかったという。この解決策について、金子氏は以下のように当時を振り返る。
「社内では経営者を巻き込んで、会社として取り組む体制を構築した。一方、ヘアサロンに対しては、『入力すれば(分析機能などで)売上予測や時間単価などがわかる。数字を把握することで経営状態も明確になる』と入力のメリットを伝え続けた。改善ポイントを可視化して解決するサイクルを回していく中で、経営意識も変わっていった」(同氏)
今後は美容業界向けのクラウドサービスを提供し、アナログな美容業界をさらにデジタル化していきたいとのことだ。