VMwareのCEO(最高経営責任者)を務めるPat Gelsinger氏が、オンラインで開催中の「VMworld 2020」に合せて、日本メディアやジャーナリストとの共同インタビューに応じた。Gelsinger氏は、「VMwareはKubernetesを業界標準として利用できるようするために、さまざまな課題解決に取り組む」などと述べた。インタビュー中は米国カリフォルニア州の自室の様子をカメラで披露するサプライズもあった。
日本とのインタビューに応じたVMware CEOのPat Gelsinger氏
--新型コロナウイルス感染症は、VMwareのビジネスにどんな影響を及ぼしているのか。
VMwareでは2020年3月以降、在宅勤務を推奨し、顧客ともリモートでつながることにした。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前は、社員の約20%が分散した環境で働いていたが、いまは50%が在宅勤務しており、オフィスと在宅勤務を併用している社員が約30%になっている。こうした新たな働き方は、どこからでも働けるという柔軟性があり生産性が高い。家賃が高い(サンフランシスコの)ベイエリアに住む必要はなく、安価で家族と一緒に暮らせるところに住めばいいと思い始めた人も多い。日本でも2時間かけて都心に通勤しなくてもすむだろう。
つまり、どこからでも仕事ができるようになる環境が一般化し、それに伴い、人々はそれを実現するために不可欠なデジタルインフラを求めるようになる。将来のためのデジタルインフラを構築するためのパートナーを選択しなくてはならないとも言える。VMwareにとっては、ここにユニークなチャンスがある。顧客とのパートナーシップを深め顧客との戦略的ビジョンに深く関わっていくことができる。
私自身の出張もなくなり、出張をしない1年は初めてだ。日本のチームには、最初に行く海外は日本だと言っている。日本の顧客やパートナーに会えることを楽しみにしている。
--VMworld 2020の基調講演で数多くの技術や製品、サービスを発表した。どれが重要なポイントになるのか。
先行きが不透明な時代にも対応できるデジタル基盤として、「Digital Foundation」を示した。デジタルインフラを活用して新たな環境でも顧客にアプローチでき、従業員は在宅勤務ができ、あらゆる場所でヘルスケアのサービスを受けることもできるようになる。人類は大変な危機に直面したが、わずかな期間で新たな環境に移行し、これらを実現した。これは人類史上、大きな変革だった。
一方、5つのソリューシヨンプラットフォームを示したが、その中では「モダンアプリケーション」「マルチクラウド」「セキュリティ」は重要なポイントになる。Tanzuポートフォリオの拡張も、今回の発表の中では重要だ。さらに、NVIDIAなどとの提携による「Project Monterey」によってAI(人工知能)の活用がより促進される。企業の10~15%しかAIを利用していないが、これからはAIが主流の技術になり、モダンアプリケーションとの組み合わせで利用が促進される。Project Montereyは、vSphereを分散システムにしようと考えているものだ。
I/Oとセキュリティを直接ハイパフォーマンスなSmartNICに移行させようともしている。2021年になればこれが実を結んで成果を発表できるだろう。デザインパートナーのIntel、NVIDIA、Pensando Systemsとの協業の成果を楽しみにしてほしい。個人的には、約30年前から業界の中で一緒に仕事をしてきたNVIDIAのJensen Huang社長兼CEOと対談でき、Project Montereyに触れられたのは楽しい出来事だった。
また、SaltStackの買収も発表した。vRealize Suiteの自動化によってデータセンター内の自動化が促進される。今回のVMworld 2020では数多くの発表があったが、日本のパートナーや顧客にも多くのメリットを提供できるだろう。
さらに、VMwareはCIO(最高情報責任者)と開発者が会話する環境を提供したいと考えている。9月上旬に開催した「SpringOne」には2万人の開発者が参加し、開発者とCIO、IT部門が会話をする機会ができた。開発と運用の間にあるギャップを埋める役割を果たしたい。