建設や鉱山機械、産業機械などの事業を展開する小松製作所(コマツ、港区、連結従業員数6万2823人)のグループ企業で、プレス機械や板金機械、それら周辺装置を開発、製造、販売するコマツ産機(石川県金沢市、従業員数550人)は、営業業務改革に取り組む一環でSalesforceを導入。営業プロセスマネジメントを実現し、「稼ぎ頭の高齢化」や「属人的スキルのばらつき」といった多くの営業部門で抱える課題を解決。「お客様に向き合う時間を増やす」ことに成功しているという。
Salesforce活用ユーザー企業が自社の事例をプレゼンし、日本一を決める「SFUG(Salesforce User Group) CUP」の決勝では、同社の講じた施策や、定着化から帳票出力アプリの開発に至るまでの道のりが紹介された。
仕事時間の7割が顧客訪問以外の業務に…
コマツ産機がSalesforceを導入したのは2012年。ただし、導入初期は部門によって活用度合いやメンテナンス工数にばらつきが発生しており、管理者の負荷増大が課題となっていた。そのため2017年に、ばらばらだった営業プロセスマネジメントを標準化し、Salesforce組織をシステム統合して社内の定着を図った。同時に評価指標(KPI)を設定し、ダッシュボードで可視化する対策にも着手したという。
登壇したコマツ産機の営業本部 営業管理部 改革グループ 兼 コマツ情報戦略本部 システム推進第3部 折坂志郎氏は、「営業部員の高齢化で、ベテラン営業のノウハウ共有化や若手営業のスキルアップは急務だった。たとえば、受注実績も半数のベテラン営業部員が、80%の受注量をカバーしていた」と、当時を振り返る。
さらに営業部員の仕事内容を調べる工数調査を実施した結果、顧客先への訪問時間は全体工数の約30%であることが判明した。つまり、営業部員の仕事時間の70%は、各種帳票や会議資料の作成といった付帯業務に割かれていたのだ。
使いやすさを追求し、LEXで画面を刷新
こうした課題を解決し、営業部員の生産性向上を実現すべく、コマツ産機では営業業務改革プロジェクトを発足させた。具体的な目標は、「営業部員の商談行動の統一」「営業活動工数を30%から60%に引き上げる」「営業活動をデータ化し、解析できるようにする」ことである。
ただし、これらの目標を達成するには、3つの課題を克服する必要があったと折坂氏は振り返る。「目標を立てた時点では、営業活動の計画が共有化されていなかった。また、営業活動の工数を増加させるためには、事務作業の負荷を削減する必要があった。さらに、『Salesforceへの入力や確認が煩雑』という現場の声にも対応しなければならなかった」(同氏)
コマツ産機 折坂氏
営業活動計画の共有化施策では、全国のマネージャーに対してマネジメント支援を実施した。具体的にはSalesforceを利用した週次ミーティングで、Salesforceに対する理解を深めてもらった。同時にKPIの設定やミーティング用ダッシュボードの整備、商談の可視化や営業計画書の作成、レビューなども実施したという。
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また、営業部員の事務作業負荷を削減する施策では、セールスバックオフィス(SBO)部門の組織化に取り組んだ。SBO部門は、営業業務で発生するさまざまな付帯業務を専門的に担う組織である。SBO部門が営業の付帯業務を代行することで、第一線に立つ営業部員が顧客訪問に時間を費やせるようにした。折坂氏は「たとえば、営業部員が外からモバイルでコミュニケーションできるなどの工夫を凝らした」と説明する。
さらに「Salesforceへの入力や確認が煩雑」という課題に対しては、「Lightning Experience(LEX)」環境への移行で解決を図った。LEXはSalesforceの画面を柔軟にカスタマイズできる、新たなインターフェースである。LEXでSalesforceの画面を改良した。
LEXの優位性について折坂氏は、「強力なカスタマイズツールがそろっていること」を挙げる。
「部門ごとに分かれていたSalesforce組織を統合したり、商談活用の可視化や営業要望を即座に反映したりする環境を構築するには、LEXへの移行が不可欠だった。(中略)これまでUI(ユーザーインターフェース)デザインの変更は(モバイルアプリとウェブアプリのカスタムUIである)『Visualforce』でコーディングするしか手段がなかった。しかし、LEXを利用すれば、高度にカスタムできるようになった」(同氏)
また、ビジネスプロセスを自動化し、プロセスを作成しながらグラフィック表示を確認できる「プロセスビルダー」も、ルールの統制や業務ロジック、バッチ処理などで役立っているという。
折坂氏は「開発者視点でLEXを見ると、画面やロジックのカスタマイズにコーディング不要な開発ツールが充実している。これは開発コストを抑制し、現場の要求にスピード感を持って対応できるようになるという利点がある」と説明する。