調査

日本は不安やストレスの相談相手にロボット/AIを求める傾向--オラクル調査

藤本和彦 (編集部)

2020-11-04 13:30

 日本オラクルは11月4日、コロナ禍の日本における働き方と人工知能(AI)の利用実態に関する調査結果を発表した。調査対象者の61%が、2020年は最もストレスを感じる年と回答しており、87%が不安やストレスについて相談する相手としてロボットやAIを受け入れることが明らかになった。

 この調査は、米Oracleと米Workplace Intelligenceが共同で実施したもの。米国、英国、UAE、フランス、イタリア、ドイツ、インド、日本、中国、ブラジル、韓国の11カ国で、1万2000人以上の従業員、マネージャー、人事部門リーダー、経営幹部が対象。日本の回答数は1000人。

慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏

 調査によると、「コロナ禍によるリモートワークで生産性が上がった」とした日本の回答者は11%で11カ国中最下位、職場におけるAIの利用率(26%)も最下位だった。一方、「コロナ禍によりAIツールへの投資を加速する」と回答した人は日本では44%で、特に経営者層は63%と回答しており、生産性を改善する施策としてAIツールへの投資意欲が高まっていることも判明した。

 コロナ禍は従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしており、日本でも、従業員がコロナ禍による職場での不安の増加や気力の減退に悩んでいることが分かった。具体的には、61%がこれまでのどの年よりも2020年は職場でストレスと不安を感じたと回答。このストレスと不安の増加は、日本の従業員70%のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、ストレスの増加(37%)、ワークライフバランスの喪失(30%)、社交がないことによる気力減退(20%)、極度の疲労(燃え尽き症候群)(16%)を生じさせているという。

 従業員はテクノロジーにコラボレーションツール以上のものを求めており、テクノロジーによるメンタルヘルスのサポートを期待している。74%が自分の会社が今以上に従業員のメンタルヘルスを守る必要があると回答。33%の企業は、コロナ禍の結果として自身の会社がメンタルヘルスのサービスまたはサポートを追加したと回答している。

 また、49%が仕事上のストレスや不安を上司よりもロボット/AIに話したいと回答した。メンタルヘルスのサポートをロボット/AIよりも、カウンセラーやセラピストといった人に頼りたいという回答は13%だった。その理由として、ロボット/AIはジャッジメントフリーゾーン(無批判区域、決めつけのない環境)を与えてくれる(42%)、問題を共有する上での先入観のない感情のはけ口を提供してくれる(27%)、医療に関する質問に迅速に回答してくれる(26%)が挙げられた。

 63%がメンタルヘルスのサポートのために自身の会社がテクノロジーを利用することを望んでいる。これには、プロアクティブな医療モニタリングツール(27%)、医療リソースへのセルフサービスアクセス(24%)、オンデマンドカウンセリングサービス(21%)、医療に関する質問に答えるチャットボット(20%)、健康または瞑想アプリへのアクセス(18%)が含まれる。

 コロナ禍によるリモートワークでは、多くの国で生産性が上がっているのに対し、日本では生産性が下がる傾向にあった。日本では、46%がリモートワークで生産性が下がったと回答しているのに対し、生産性が上がったと回答したのは15%と11カ国中で最下位。一方で、11カ国平均では、41%が生産性が上がったと回答しているのに対し、生産性が下がったと回答したのは36%であり、11カ国中8カ国でリモートワークで生産性が上がっていることが分かった。

 日本では、リモートワークで労働時間が減ったと回答したのは34%であるのに対し、増えたと回答したのは21%で11カ国中最下位。11カ国平均では、25%が労働時間が減ったと回答し、52%が増えたと回答。

 今回の調査内容・結果を監修した慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏は「日本以外の多くの国では、労働時間が増えて企業の生産性が上がっているのに対し、日本では、個人の労働時間が減ったことにより企業全体の生産性が大きく下がる傾向を示している」と指摘する。

 さらに同氏は、日本では職場でのAI活用が海外に比べて遅れているが、コロナ禍により、AIツールへの投資意欲が高まっていると話す。

 現在職場でAIを活用していると回答した人は日本では26%であり、11カ国の中で最下位。11カ国平均は50%で、インド(79%)、中国(76%)、UAE(58%)、ブラジル(54%)、米国(53%)、韓国(46%)、フランス(41%)、イタリア(40%)、ドイツ(37%)、英国(36%)となっている。

 一方で、コロナ禍によりAIツールへの投資を加速すると回答した人は日本では44%で、特に経営者層は63%、部長クラスは58%が投資を加速すると回答しており、事業をけん引する経営層のAIツールへの投資意欲が高まっているという。

 さらに、日本では、「職場でのロボット/AIなどのテクノロジーへのオープンさ(受容)はグローバル平均とほぼ同等」(岩本氏)だった。具体的に、誰の代替になることを受け入れるかという質問に対し、日本では、アシスタント(85%)、セラピスト/カウンセラー(82%)、同僚(80%)、部門長(75%)、最高財務責任者(CFO、70%)、マネージャー(69%)、最高経営責任者(CEO、66%)について受容できると回答。11カ国平均では、アシスタント(86%)、同僚(82%)、セラピスト/カウンセラー(80%)、部門長(73%)、CFO(71%)、マネージャー(71%)、CEO(67%)となっている。

 岩本氏は今回の調査結果について、「ウィズコロナ/ポストコロナ時代では、企業は、従来の生産性向上に対する課題を克服すると同時に、従業員のメンタルヘルスに対するケアを強化することも重要。メンタルヘルスケアについては、人よりもテクノロジーに期待する従業員が多く、同領域でもテクノロジーの導入・活用が重要になる」といい、「日本では、リモートワークをうまく活用できておらず、生産性が全体的に下がっている一方で、職場でのAI/ロボットなどのテクノロジーの活用に対しては、日本の従業員は抵抗なく、かつコロナ禍によってテクノロジーへの投資を加速すべきという意識が高まっている」と考察する。

 その上で、「コロナ禍は、日本企業の職場でのデジタルトランスフォーメーションを加速するきっかけとなることを期待する」とまとめた。

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