検査や点検の自動化で製造業自体が大きく変わる可能性も
以上が発表の概要だが、今回このサービスに注目したのは、内容が製造現場でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の最先端だと感じたからだ。
このサービスを商品化した背景について、日立は次のように述べている。
「少子高齢化に伴う労働人口の減少が深刻化する中、製造現場では多種多様なセンサーからデータを収集、利活用することで、業務効率化などDXの実現に向けて取り組んできた。この流れはコロナ禍においてさらに加速しており、製品検査や設備保全においても、目視や聴音といった人の感覚に頼った従来の検査や点検から自動化、省力化することが求められている」
さらに、こう続けた。
「特に、多様な情報を持つ音を活用した聴音点検に対するニーズが高まっているが、後継者不足の中でいかに品質トラブルや設備故障の予兆となる異常音の判定に必要となる熟練者の経験やノウハウを継承するかが、喫緊の課題となっている」
こうした課題に対応するため、同社は今回のサービスを世に送り出したというわけだ。
手前みそな話に少々おつき合いいただくと、筆者はかつてファクトリーオートメーション(FA)をテーマに、さまざまな製造現場の自動化やIT化について取材し、新聞記者として50回ほどの連載記事を書いた。その経験から今も印象強いのは、製造現場というと製造工程に目が行きがちだが、実は作業の相当な割合を製品検査や設備保全が占めていることである。特に検査はここまでやるかと感じたことも多く、それが「日本品質」なのだとつくづく思った。
今回のサービスもそうした製造現場の延長線上にある。筆者もその後、これまでの目視検査にAI技術を活用したケースは取材したことがあるが、聴音に適用した話は今回初めて聞いた。他社でも実用化しているケースがあるかもしれないが、最先端であることは間違いないだろう。
製品検査や設備保全の業務が高度化、効率化すれば、製造業自体が大きく変わる可能性がある。その意味で、今回のサービスには今後も注目していきたい。