東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長の不適切発言や、新型コロナウイルス対策としてのスマートフォン用アプリの不具合が、このところ大きな騒動となっている。さらに、企業の不祥事も引きも切らない。問題点は何なのか。筆者なりに挙げてみたい。最も訴えたいのは、「組織のトップはもっと“想像力”を働かせよ」だ。
企業不祥事をマネジメントの観点から見た5つの問題点とは
写真1:森会長は発言撤回の記者会見も行ったが…(2月4日、YouTubeより)
先週来、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視とも受け取れる発言とその後の対応への反発が広がっている。また、新型コロナウイルスの陽性者との接触を知らせるスマートフォン用アプリ「COCOA(ココア)」の不具合が4カ月以上も放置されていた問題も、行政のコロナ対策やデジタル化の動きに水を差す格好となっている(写真1)。
いずれの騒動も連日、多くのメディアで報道されているので、内容についてはここで触れないが、共に運営側が明確なメッセージを発信して世の中の納得と共感を得る努力を尽くさないと、今後うまく行かないだろう。
また、直近では上記の2つの騒動が目立っているが、従来にも増して企業における不正な会計処理や品質管理、情報流出といった不祥事は引きも切らない状態だ。
そこで、こうした出来事が目立っているのを機に、マネジメントの観点から見てどこが問題なのかを、これまでの記者歴40年においてさまざまな企業の不祥事を取材してきた筆者なりに、次のように5つのポイントにまとめてみた。
1つ目は、「収益至上主義」だ。企業にとって収益を追求することは重要な目的だが、成長を至上命題とするばかりに、肝心の製品やサービスの品質がなおざりになってしまうケースは、これまでの企業の不祥事でも数多く見受けられた。
2つ目は、「コンプライアンスへの対応」だ。企業の不祥事では、つい起きた物事のいい加減さに目が行きがちだが、マネジメントの観点からまず注目すべきなのは、それが法令違反なのかどうかだ。
3つ目は、「ガバナンスの欠如」だ。企業の不祥事においては、ガバナンスが欠如したケースがかなりの割合で見受けられる。管理体制の甘さによるものだが、最も問題なのは、起きた物事について、不祥事が発覚するまでトップが把握していなかったケース、もしくは把握していた上で不祥事の核心を隠蔽(いんぺい)しようとするケースである。
4つ目は、「ブランドへの影響」だ。企業の不祥事における謝罪会見で、トップに「今回の出来事が自らのブランドにどれくらい影響を与えると考えているか」と尋ねると、誰しも一瞬、顔をこわばらせる。ブランドは一言で言うと「利用者の信頼」だと筆者は考える。ほとんどの経営者はそれを知っているからこそ、顔がこわばる。真摯に答えようとするからだ。
5つ目は、「トップの責任」だ。これまで挙げた4つのポイントにも全て関連することだが、企業が起こした不祥事に対して、そのトップがどのように責任を取るかは、マネジメントの観点から見ても非常に重要なポイントである。