新型コロナウイルスのワクチン接種が2月17日、国内で始まった。この管理業務にITを活用すべく、行政だけでなくITベンダーも相次いで名乗りを上げている。国を挙げた一大プロジェクトに、ぜひITを生かしたいところだ。
SAPジャパンがワクチン接種安心サポートサービスを提供
新型コロナウイルスワクチンの国内での接種は、まず医師や看護師ら4万人に行われ、3月に残りの医療従事者370万人、4月から65歳以上の高齢者3600万人に対象を広げ、その後、全国民へ――。まさしく国を挙げた一大プロジェクトがスタートした。
国民に対する接種は、予防接種法に基づく「臨時接種」の特例として、国の主導のもと、市町村が主体となって実施することが決定している。そのため、国においてはワクチン配布の仕組みの整備、自治体では接種会場の確保や接種対象者への通知、地域のワクチン流通を担う医薬品卸の選定などの準備を急速に進めている。
さらに、新型コロナウイルスワクチンは超低温フリーザでの保存が必須であり、解凍後短期間で使い切らないといけないという特徴がある。加えて、生産量に対する需要は非常に大きく、需給は世界的に逼迫(ひっぱく)している状況だ。
集団免疫確保には75%の接種率が必要とも考えられており、できる限り多くの国民が自発的意思で迅速に新型コロナウイルスワクチンを接種できる状況を生み出すことが重要になっている。
現在、政府においてもワクチンの円滑な接種を支援するため、「接種管理システム(仮称)」の構築に向けて取り組んでいるが、接種の予約に伴う業務は各自治体が行う方向で動いていることから、その需要に向けてITベンダーもこのところ相次いで対応したサービスを打ち出している。その中から、直近でこの取り組みを発表した3社のサービスを以下に紹介しておこう。
まず、SAPジャパンが2月16日に発表し提供を開始したのは、自治体から住民へのワクチン接種に至る管理と接種状況をリアルタイムで可視化するクラウドベースの「自治体向け新型コロナワクチン接種安心サポートサービス」だ。SAPがグローバルで2020年11月に提供を開始した「ワクチン・コラボレーション・ハブ(VCH)」と呼ぶサービスの自治体向け機能である。
SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏は発表の翌2月17日に開いたオンラインでの事業戦略会見で、同サービスについて図1を示しながら、「新型コロナという未知の危機に対し、住民はさまざまな不安を抱え、判断を躊躇(ちゅうちょ)するケースが多く見られる。このサービスでは、住民の体験や考えを理解し、正しい情報周知を通じて意識を向上させ、ワクチン接種への躊躇を減らすことにより、予防接種プログラムの成果を向上させる点に大きな特長がある」と説明した。
図1:SAPジャパンが提供を開始した「自治体向け新型コロナワクチン接種安心サポートサービス」の概要と代表取締役社長の鈴木洋史氏(2021年2月17日に行われたオンラインでの事業戦略会見より)