本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、NECが開発した「一斉同報機能付き多言語音声翻訳システム」を取り上げる。
第1弾として日本語と英語間の音声翻訳と一斉同報に対応
NECは先頃、三井住友建設との協業により、建設現場など異なる言語が使われる環境でのコミュニケーションを支援する「一斉同報機能付き多言語音声翻訳システム」を開発したと発表した。同システムは三井住友建設の「どこみなフォン/DokoMinaPhone」に採用され、スマートフォンにインストールされた専用アプリを使用することで、利用者全員あるいは指定された作業グループに対して、音声翻訳された内容を一斉に同報することが可能になる。
建設業においては、グローバル化が進む状況の中、国内において増加する外国人就労者や海外進出先のローカルスタッフとのコミュニケーションの円滑化が課題となっている。同システムはこの課題を解決するため、まず第1弾として日本語と英語間の音声翻訳と一斉同報に対応する。
同システムの主な特徴は次の3つである。
※クリックすると拡大画像が見られます
一つ目は「人間の話し言葉に近い、より自然な翻訳を実現したこと」だ。国内にて研究開発を行っている情報通信研究機構(NICT)のニューラル翻訳エンジンを搭載し、日本語から外国語、もしくは外国語から日本語へ、より自然な翻訳を実現している。
二つ目は「目的に合わせたグルーピングの動的設定」だ。専用のスマートフォンアプリを起動してQRコードを読み取り、認証することで、あらかじめ設定されたグループに簡単に参加し、音声通話の自動翻訳によるコミュニケーションが開始できる。
三つ目は「チャット形式による時系列翻訳変換の表示」だ。発話された内容は、録音され聞き直しが可能となっており、原文と翻訳文、逆翻訳文をグループチャット形式で画面に表示する。
図1に示した左上のチャットのように、日本語発話者の発言が、「原文」「翻訳文」「逆翻訳文」の順に表示され、その右下に返答した英語発話者の発言が同様の順序で表示される。逆翻訳文が表示されるので、正しく翻訳されているかどうかを確認することができる。