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DXを促進するための経営者の役割--デジタル時代に求められる5つの行動様式

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2021-04-14 07:00

 デジタル変革(DX)の本質は「デジタルが高度に浸透する社会に適合した企業に丸ごと生まれ変わらせる」ことであり、DXをIT課題ではなく経営課題と捉えなければなりません。DXを円滑に推進するためには、組織や制度の改革に加えて、組織カルチャーや全従業員の意識変革が必要となり、経営者のメッセージや行動は特に重要な役割を果たします。

DXに求められる経営者の5つの行動様式

 DXを「それはIT業界やネット企業の世界の話だ」「自社の業界とは無縁だ」と対岸の火事と捉える企業経営者が少なくありません。しかし、デジタルの波はあらゆる業界に押し寄せ、もはやその勢いを止めることも、逆行させることもできません。まずは、今起こっていること、そしてこれから起ころうとしていることに正面から向き合い、DXの本質的な意味を正しく理解しなければなりません。

 DXを円滑に推進するためには、多岐に渡る組織や制度の改革に加えて、組織カルチャーや全従業員の意識変革が必要となり、「後はよろしく」「過去の常識」といったわなに陥らないためには、DXに向けた経営者の意識や行動様式の変革が求められます。今回は、DXに求められる経営者の5つの行動を示唆します(図1)。

図1.DXに求められる経営者の5つの行動 図1.DXに求められる経営者の5つの行動
※クリックすると拡大画像が見られます

トップの思いを込めた宣言と行動を起こす

 DXによって企業がどこに向かうのかを明確に示すには、ビジョンが必要となります。ビジョンは「5年後や10年後に、自分たちがどういうことを実現したいのか」という未来の行き先、すなわち「目的」を示すもので、できれば簡潔な言葉で表現することが望ましいといえます。

 2018年1月、米国で毎年開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で、トヨタ自動車の豊田章男社長が同社の新しいビジョンを発表しました。それは、「トヨタ自動車は、自動車メーカーからモビリティサービスを提供していく会社へ変わっていく」というものでした。これがまさにビジョンです。このビジョンの中には、やっていくこととやらないことの両方が明確に示されています。すなわち、自動車を製造して売るという従来の製造業の事業ではなく、自動車に限らずさまざまな移動の手段をサービスとして提供するサービス業の事業を推進する会社になることを宣言しています。

 しかし、ビジョンを描いて宣言しただけで経営者の役割を果たしたと思ってはなりません。経営者は宣言するだけでなく、自ら動く、試す、使うという行動を起こすことが必要です。まずは、身近な生活の中でデジタルに接する機会を積極的に作るように心がけることです。今や、スマートフォンさえ使いこなすことができれば、さまざまなデジタルビジネスやサービスを体験できます。そして、社内のシステムにも自らアクセスし、誰よりも率先して利用しなくてはなりません。

異質なものを受け入れる器量を持つ

 日本企業の特徴の一つに同質性の高さがあります。基本的に新卒一括採用で入社した正社員が中心メンバーであり、役員クラスまで昇進する人のほぼ全員が生え抜きの社員、しかも50歳以上の日本人男性という企業がほとんどです。

 もちろん、若ければ良い、女性であれば良い、外国人であれば良い、中途入社であれば良いということではありませんが、中核を担う人材のプロファイルがあまりにも似通っており、ダイバーシティーが欠如していることは、デジタル時代においては欠点といわざるを得ません。同質性は、大量生産時代の事業モデルには非常に適合していましたが、不確実性と変化の著しいビジネス環境においては、間違いを犯しやすく、またそれに気付きにくい上に、修正が困難となる傾向が強まります。

 デジタル時代の企業には、既存事業の強みを維持・強化しつつも、新規の価値を創出する「両利きの経営」が必要ですが、既存事業にとって新規事業は異質であり、相容れない組織特性を必要とします。新規事業が上手く立ち上がらない、M&Aや企業合併で失敗が多い、ベンチャー企業との協業が進まないといった問題の多くは同質性が阻害要因となっており、異質な考え方や慣行を受け入れないことに起因する部分が少なからず存在します。

 こうした状況に対して経営者は、自ら殻を打ち破る行動を示さなければなりません。今後、少子高齢化が進み、就労人口が減少する中、人材の多様化は避けられません。また、新規の価値を探索し、創出する組織では、異質な才能を最大限に活用することが必要です。経営者は同質性を抑制し、異質な考え方や慣行を積極的に取り入れる姿勢を見せることが求められます。

 具体的には、中途採用を強化するなどして外部の血を投入することに加えて、社内に閉じこもりがちな従業員を積極的に外部のコミュニティーに参画させるなどして、外の空気を吸わせる機会を作ることを大いに進めるべきです。また、経営会議や役員会などの意思決定機構をできる限りオープンにして、一般社員や若手の意見を取り入れられるように工夫することが有効です。

自前主義と脱自前主義のメリハリをつける

 これまで国内の大企業は、自社で生産設備や販売網を持つなど、自前で強みを構築してきました。他社と連携を組む場合も、系列などにより強固な垂直統合を指向してきたといえます。一方、Amazon.comやGoogleのようなデジタルネイティブ企業は、自社だけでやろうとせず協調戦略やプラットフォーム戦略を採ります。また、デジタルビジネスの世界では、企業やビジネスシステムが互いにつながることでより大きな価値を生み出すことから、エコシステムの構築が有効な戦略と考えられます。

 経営者は、まず捨てるものと残すものを明確に示すことが求められ、そのためには自社のコアとなる領域をゼロベースで見つめ直す必要があります。その際に、結果として強みとなった能力が、本質的なコアであるかどうかを問い直すことが重要です。

 例えば、大量生産大量消費を前提に全国に張り巡らした支店網が、既存事業にとっては大きな強みであっても、新規事業にとっては逆に足かせとなるかもしれないということです。この判断は、部署ごとなくすようなこともあるため、現場スタッフや中間管理職が下せるものではなく、経営者の重要な任務となります。

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