Appleの最高経営責任者(CEO)Tim Cook氏とソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントであるCraig Federighi氏、その他の幹部らは米国時間6月7日に開幕した開発者会議「Worldwide Developers Conference(WWDC)2021」で、複数の競合企業を意識したと思われる数々の機能を盛り込んだ革新的なロードマップを示した。
同社が他社の名前を口にすることはほとんどないものの、今回のWWDCではまるで聴衆の中にGoogleやFacebook、Amazon、Zoom Video Communicationsといった競合企業だけでなく、広告業界やVPN企業、Peloton Interactiveに至るまでのアニ文字が並んでいたかのような印象を受けた。
つまり、Appleによる発表内容のほぼすべてが、強力なプライバシー保護機能を武器にして競合企業との差別化を図るものになっていたということだ。同社が発表した内容を以下に挙げる。
GoogleやFacebookを意識した動き
Appleは決してGoogleやFacebookの名前を直接口にしたりはしないだろうが、Appleの「プライバシー分野のリーダーシップ」という表現はしばしばこれら2社を意識したものとなっている。Appleはソフトウェアアップデートを通じてプライバシー擁護を推進してきており、クロスサイトトラッキング(サイトをまたがる追跡手法)だけでなく、収益化につなげられるトラッキングピクセルからもユーザーを守ろうとしている。
Appleはまず「Safari」に「インテリジェント・トラッキング防止」機能を搭載した。そして、今回は「メール」アプリにも同機能を組み入れようとしている。今後は他のアプリにも搭載されていくだろう。同社は以下のように述べている。
「メールプライバシー保護」は、差出人がメール内に目に見えないピクセルを潜ませてユーザー情報を収集するという行為を防止する。この新機能によって、差出人はユーザーが電子メールを開いた日時を検知できなくなるとともに、ユーザーのIPアドレスを知ることができなくなるため、オンライン上でのユーザーの他の行動と関連付けたり、ユーザーの位置情報を把握したりできなくなる。
インテリジェント・トラッキング防止機能は、トラッカーに対してユーザーのIPアドレスも隠蔽(いんぺい)することでさらに強力になる。これにより、ユーザーのIPアドレスを固有の識別子として利用し、複数のウェブサイトを横断してユーザーの一連の行動を把握した上で、ユーザーに関するプロファイルを構築するという行為を阻止できるようになる。