SAP Sapphire

SAPのクラインCEOに聞く、企業のフロントからバックエンドまでを統合する術

末岡洋子

2021-06-15 06:00

 SAPのChristian Klein氏は、単独CEO(最高経営責任者)として同社を率いるようになり2年目を迎えた。クラウド時代に向けてソリューションを移行し、データモデルの統一、プラットフォームの提供と整備を進めている。オンライン開催された「SAPPHIRE NOW」でKlein氏が最高マーケティング・ソリューション責任者のJulia White氏とともに取材に応じた。

--この1年を振り返えってください。

Klein氏(以下、敬称略):コロナ禍になって14カ月は大きな変化があった。企業の多くがコロナ禍を乗り越えているが、幾つかの学びがあった。

SAP 最高経営責任者のChristian Klein氏
SAP 最高経営責任者のChristian Klein氏

 基調講演でも語ったように、完全にビジネスモデルを変えた企業も多い。例えば、伝統的な販売からeコマースを展開するために、サプライチェーンを再構築してホームデリバリーを可能にし、新しい決済手段を提供するといった具合だ。キャッシュフローの最適化を進めたところも多い。全て技術がイネーブラーになっている。SAPは全顧客を「インテリジェントエンタープライズ」にするという戦略を掲げてきたが、コロナ禍により、この戦略が正しいことが立証された。

 コロナ禍のほか、船の座礁によるスエズ運河の閉鎖や半導体不足など、サプライチェーン側でも予期せぬ中断要因が起こった。SAPは調達・購買の「SAP Ariba」を展開しており、これに物流と資産管理にも拡大したビジネスネットワークを構築するという構想を進めた。2021年のSAPPHIRE NOWでは、「SAP Business Network」として発表することができた。バイヤー、サプライヤー、製造、物流など、さまざまな立場の企業が参加し、リアルタイムで透明性のあるサプライチェーンを実現する。

 2020年のSAPPHIRE NOWで打ち出したサステナビリティーも、この1年で着実に進めてきた。サステナビリティーはコロナ禍の前から課題であり、コロナ禍が収束した後も続く、この時代最大の課題だ。気候変動との戦いにおいて、SAPは顧客を積極的に支援する。まずは測定すること。測定できないものに対して行動を取ることはできない。そこで、サステナビリティーをSAPの全製品に組み込んでいる。

White氏(同):コロナ禍への対応として「クイックフィックス」が進んだ。クラウドへの移行や、ビジネスプロセス上におけるノーコードでのアプリ作成などだ。しかし必要なのは、ビジネスプロセスのトランスフォーメーションになる。

SAP 最高マーケティング・ソリューション責任者のJulia White氏
SAP 最高マーケティング・ソリューション責任者のJulia White氏

 そこへの支援として「RISE with SAP」を提供するが、今回はより付加価値のあるERP(統合基幹業務システム)モジュールに拡充する「RISE with SAP for Modular Cloud ERP」、業界別の「RISE with SAP for Industries」に拡大した。ビジネストランスフォーメーション・アズ・ア・サービスとして、顧客のトランスフォーメーションを支援する。周辺ではなく中核となるビジネスプロセスに取り組むことができる。

 SAPアプリケーションの土台となるプラットフォーム戦略も、「SAP Business Technology Platform(BTP)」として進めている。拡張性、SAPアプリケーションの統合、全体のアナリティクスなど重要な役割を果たす。

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