ローコード/ノーコード開発ツールは、市民開発者が自らのアプリケーションを自身で構築できるようにするためだけに存在しているわけではない。また、プロフェッショナルな開発者が簡単なアプリケーションを構築し、配備する手間を省くためだけに存在しているわけでもない。ローコード/ノーコードソリューションは、開発者自身が自らの作業を容易にするとともに、業務を遂行する上で必要となるプレビルド型アプリケーションを迅速に統合できるようにするツールでもある。
Mendixが最近実施した調査によると、64%のITプロフェッショナルはローコードについて、ワークアラウンド開発ソリューションとして最初に検討する対象だと回答しているという。また、ローコードを利用しているプロジェクトのうち、業務グループとIT担当グループの間でコラボレーションを実施しているものは59%にも上るという。
そこで、ローコード/ノーコードという開発形態が開発者の仕事にどのような影響を与えるのかという可能性について、業界のリーダーたちの意見を聞いてみた。
Dovel Technologiesのシニアバイスプレジデント兼最高イノベーション責任者であり、最高データ科学者でもあるRod Fontecilla氏は、「ローコードは、従来型のプログラミングへのカウンターカルチャーの様相を呈していると言ってもよいだろう」と述べ、「開発者への需要は高く、彼らはこの数十年で大規模なコミュニティーを築き上げているため、こうした変化への対応は難しいかもしれない。しかし、開発者はこの種のプラットフォームに積極的に取り組み、認定資格を取得し、そのスクリプティング言語を習得し、自らのスキルを補完する必要がある」と続けている。
Fontecilla氏は、開発部門におけるローコード/ノーコードの利用の高まりによってハイブリッドな環境が生み出されると予測しており、「こうしたローコード/ノーコードプラットフォームの普及が進むにつれ、エンタープライズソフトウェアの環境は、極めて複雑な業務プロセスをカスタムコーディングで、そしてその他のプロセスをローコード/ノーコードプラットフォームで実装し、組み合わせていくというハイブリッドなものになるだろう」と述べている。
こういったハイブリッドアプローチはほとんどの環境において当たり前のものとなる可能性がある。SAPで「SAP Customer Experience」のコマース責任者を務めるNuno Pedro氏は「プログラミングのベストプラクティスは、再利用可能なコンポーネントを構築することであり、開発者はハイブリッドのローコードアプリケーションプラットフォームを用いて社内のCRMソリューションを統合するためのコネクターなどを開発し、社内の他の開発チームと共有できるようになる」と述べている。
最初からコードを開発する時代は終えんを迎えつつあるが、完全に終わったわけではない。Bonitasoftの最高経営責任者(CEO)Miguel Valdes Faura氏は、「ローコードアプローチには、例えばAPIの開発や、アプリケーションと他システムの統合、フロントエンドインターフェースのカスタマイズといったことが可能な開発者向けドラッグ&ドロップツールが含まれている」と述べている。開発者が実際にコードを記述する際には、今まで通りの実績ある、本当の意味でのツールやプラットフォーム、フレームワークを使用することができる。同氏は「ハイブリッド型のローコードアプローチを提供するプラットフォームは、スキル混在型の開発チームにとって最も有益なものになるだろう」と述べている。