ハンコを電子契約にしただけでは契約業務に関する課題の解決にならない。契約ライフサイクルマネジメント(Contract Lifecycle Management:CLM)ソリューションを提供するContractSは9月28日、契約デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する国内外の動向に関する記者説明会を開催して述べた。
新型コロナウイルス感染症の影響により、契約の電子締結サービスは、日本でも普及が進んでいるが、契約DX領域全体で見た場合、一部分にしかすぎない。ContractSの執行役員・最高執行責任者(COO)を務める安養寺鉄彦氏は説明する。
契約に関連した業務は、契約書の作成から締結、管理に至るまでに数多くのプロセスが存在する。CLMシステムは、そのようなプロセスを一気通貫で扱うソフトウェア。一連の契約業務を最適化できる「契約プロセス構築」と契約関連情報を可視化できる「契約管理の仕組み化」を可能にする。
米国のCLM市場は、2000億円を超える規模があり、年平均成長率が12%。CLM市場がこのように成長している理由として、契約領域が「ラストピース」であることを安養寺氏は挙げる。
企業で使われるシステムを考えた場合、コミュニケーションならSlack、営業支援ならSalesforceというように、情報系、基盤系、基幹系の各領域で標準となるプレイヤーが既に決まっているが、契約領域を埋めるような企業は不在だったという。これは契約書がこれまで紙が主だったという背景がある。
電子契約の普及により契約書がデジタルデータとしてシステムで扱えるようになり、CLMが誕生して広まりつつある。営業支援や顧客管理、人事といった他の市場と引けを取らないポテンシャルを持つ契約領域が最後のピースとして埋まろうとしており、注目を集めているという。
(出典:ContractS)
契約領域は、法務関連と考えた場合にバックオフィスとも考えられるが、契約はビジネスの取引そのものなのでフロント・ミドルオフィス寄りという側面も持つ。売り上げに直結するシステムの方が市場の規模が大きくなるため、契約領域は、単なるバックオフィスツールの市場よりも大きくなることが考えられると安養寺氏は述べる。
主な企業としては、Icertis、Docusign、Irocnclad、Agiloft、CobbleStoneなどがあり、IcertisやIroncladはユニコーン企業(評価額10億ドル以上のベンチャー企業)となっている。契約DX領域で歴史があり、今後の動向を予測する上でも「ウオッチすべき企業」として安養寺氏が挙げるDocusignは、電子締結製品を従来提供していたが、2018年にSpring CLMを買収することでCLMに進出している。
電子契約からCLMへと進んできた契約DXのトレンドだが、今後は、電子契約と「Smart Contract」の組み合わせに移行すると安養寺氏。Smart Contractは、契約に定められている内容をプログラム化して契約に付加したもの。電子契約と併存される理由は、通常と異なる事象が発生した場合には協議するといったプログラム化が難しい内容も契約には含まれるためだという。