Microsoftは10月5日、「Windows」のアップグレードとなる「Windows 11」の一般提供を開始した。筆者は長きにわたり、ずっとWindowsのアップグレードに関する記事を書いてきたが、今回はこれまでに経験したどのバージョンアップとも違っている。
Windows 11を技術的に見れば、実際にはこれは単なる「Windows 10」の機能更新プログラムにすぎないという見方もできるだろう。1つ目の証拠として、コマンドプロンプトウィンドウを開くと表示されるバージョン文字列を提出しよう。
Microsoft Windows [Version 10.0.22000.194]
確かに「バージョン10」と書いてある。Microsoftは、この文字列は互換性を確保するためのものだと主張しているが、このバージョン番号は、Windows 10の機能更新プログラムに与えられるものとまったく同じ形式に従っている。
もっと証拠が必要だろうか。例えば、Windows 11をインストールする際のアクティベーションでは、あらゆるWindows 10のプロダクトキーを使うことができるとみられている。Microsoftも、この挙動は設計通りであることを認めているようだ。
今回のWindowsのアップグレードは技術的に見れば単なるマイナーアップグレードであり、マーケティング上の理由で新しいメジャーバージョン番号が割り当てられただけであることを示す証拠は、ほかにもいくつも挙げることができる。しかしその説明では、ある重要な事実がぼやけてしまう。それは、今回のWindowsのバージョンアップには、大規模なハードウェアの移行が伴うということだ。Microsoftは使用できるプロセッサーに明確な線引きをしており、現在使われているCPUの多くは、Windows 10のサポートが終了する2025年10月には時代遅れになってしまう。
つまりMicrosoftは史上初めて、同社がほとんどの既存顧客に利用させたいと考えているわけではないWindowsのアップグレードをリリースしていることになるかもしれない。筆者が簡単に計算したところでは、現在Windows 10を使用している13億台のPCのうち、約60%はWindows 11のアップグレード要件を満たせないはずだ(ただし、PCの所有者が手動でWindows 11をインストールすることはできる)。この計算結果は、IT資産管理企業のLansweeperが、企業で使われている3000万台のPCを調べた結果ともほぼ一致している。この調査では、調べたPCの55%が、Microsoftが定めたハードウェア要件を満たしていない可能性があるという推計結果が出た。
また、最近リリースされたWindowsの中では、今回のアップグレードだけが、インストールベースの危機に対応するためのものではないことも注目に値する。
その文脈で言えば、Windows 11が大成功を収めたWindows 10の比較的穏当なリフレッシュ版であるという事実は、救いだといえるだろう。Microsoftの設計陣は、これまで何度もWindowsの根幹部分を再構築してきたが、今回のリリースではその必要がなく、Windowsの基本的な部品に力を集中できたのは素晴らしいことだった。
今回のレビュー記事は、Microsoftが「Windows Insider Program」で最後に公開したビルドに基づいている。筆者はさまざまなハードウェアやいくつかの仮想マシンでアップグレードやクリーンインストールを試してみたのに加え、この1週間ほど「Surface Pro 8」のレビューで使用したマシンでもWindows 11をテストしてみた。
この記事では、読者のハードウェアがMicrosoftの要件を満たしており、今回の(必ずしも必須ではない)アップグレードを受け入れた場合に、どんなものを使うことになるかを紹介していく。