調査

国内量子コンピューター市場、2030年度には2940億円規模に--矢野経済研究所

NO BUDGET

2021-10-11 07:30

 矢野経済研究所は10月7日、国内量子コンピューター市場を調査し、技術動向や産業にもたらす影響評価、および2030年度までの将来展望を明らかにした。

 これによると、2021年度の国内量子コンピューター市場規模は、サービス提供事業者の売上高ベースで139億4000万円の見込みで、2025年度には550億円、2030年度には2940億円に達するものと予測されるという。

国内量子コンピューター市場規模推移と予測
国内量子コンピューター市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)

 同研究所では、国内量子コンピューター市場は今後急速に拡大するものとみるが、その前提要件となるのは、(1)ハードウェアの進化や開発環境の整備、(2)ハードウェアの能力を引き出すアプリケーションの創出、(3)ユースケースの発掘――の3つがポイントになるとしている。

 ハードウェアの進化や開発環境の整備に関しては、ハードウェアの開発競争が激しさを増しているほか、内閣府が主導するムーンショット型研究開発においても複数の方式で研究開発が進められている。また開発環境の整備の面では、ハードウェアベンダーによるソフトウェア開発キット(SDK)の提供、開発プラットフォームや量子コンピューターを活用する際の各種プロセスを自動化するソフトウェアが提供されている。

 アプリケーションの創出に関しては、材料計算やシミュレーション、量子機械学習の領域を中心に、実証実験を通じた成果物として各種アプリケーションが生まれている。また、最適化分野を中心にスケジュールの最適化や座席の最適化など、より身近な課題の解決に向けたアプリケーションが登場し、実際に採用する動きなども出てきている。

 ユースケースの発掘では、各ベンダーによるユーザー企業向け教育に関する取り組みなどに加えて、2020年以降に各関連協議会が発足し、金融分野や化学分野、自動車分野など複数の分野にまたがり、ユースケースの創出に向けた取り組みを加速させていく動きも相次いでいる。

 また、同市場の将来展望について同研究所は、2024~2025年度には化学や金融、広告(レコメンド)など、先行分野を中心に一部業務での本番運用に向けた動きが始まるとしている。さらに、その他の分野でも一部業務を対象とした実証実験から他の業務への横展開などで実証実験が増加、スーパーコンピューターで扱ってきた領域のうち、新機能材料や化合物の探索など一部で量子コンピューターに置き換わる動きが出てくるものとみている。

 2026年度以降は、金融分野ではダイナミックプライシングのほか、製造分野では大規模な数値流体力学や空力特性での活用や、化学分野における有望な化合物の構造予測など、シミュレーション領域での活用が本格化するとみている。

 そして、2030年度には自動運転に向けた車両用バッテリーの開発や、医療分野での本格的な量子コンピューターの活用が始まり、予防医療や先制医療をはじめ革新的な治療法など社会的にインパクトの大きな取り組みが徐々に登場してくるとしている。

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