キリンビールは10月11日、NTTデータとビール類の醸造工程で人工知能(AI)を活用して最適なろ過計画を自動で立案するシステムを開発、9つの全ての工場に適用して年間3000時間以上の削減ができる効果を確認したと発表した。
キリンビールによると、同社では顧客ニーズへ対応すべく本社と各工場が連携して製造計画を立案している。工場ではビール類商品を醸造する仕込みやろ過、パッケージングなどの製造計画を立案しているが、特にろ過計画業務は熟練者の知見に依存した複雑な作業になり、さまざまな条件を勘案するため、作業に時間がかかり、技術の伝承が難しい業務だという。
このため2019年に、NTTデータとろ過計画業務の自動化に着手した。福岡工場に初のシステムを導入し、このシステムでは熟練者へのヒアリングを基に、設備や製造体制などの制約条件を踏まえた上で、制約プログラミング技術を用いて標準化した。2020年1月には製造規模の大きな横浜工場、また、少量多液種を製造する滋賀工場にも順次展開した。
その後は3工場での導入効果を確認し、2020年5月以降に北海道千歳工場、仙台工場、取手工場、名古屋工場、神戸工場、岡山工場で段階的な試験導入を進め、2020年12月から全ての工場で本格展開を開始した。
出典:キリンビール
これにより従来は熟練者が1回につき最大6.5時間程度を費やした計画立案の業務を最短55分にまで短縮、導入以前に比べて全工場で年間3000時間以上の時間を創出できる効果が確認されたという。福岡工場での仕様によるシステム開発費用と全工場への標準化・展開費用を含めた総投資額は約1億6000万円という。
同社は、各工場で創出した時間をさらなる品質向上や技術伝承、若手の育成などに活用し、高い品質管理レベルの製造体制を維持すると表明。ろ過計画の前工程に当たる仕込や酵母計画へのシステム展開を進めているといい、将来的に醸造計画業務全体の自動化を目指すとしている。