中国のAlibaba Cloudは、最新のアーキテクチャー「Armv9」に対応した自社設計のサーバー用プロセッサー「Yitian 710」を開発したと発表した。また、「汎用」および「特殊なAIコンピューティング」の両方に最適化された独自サーバー「Panjiu」を開発したことを明らかにした。
5nmプロセスで製造されるYitian 710は、同社のチップ開発部門であるT-Headによってカスタム開発されたもので、最大クロック3.2GHzで動作する128個のArmコアを搭載している。現地時間10月19日の発表によると、600億個のトランジスターが使用されており、8つのDDR5チャネルと96レーンのPCIe 5.0を備えている。
同社はこのプロセッサーについて、Armv9に対応した初めてのサーバー用プロセッサーであり、Alibabaのデータセンターにも導入するとしている。
Alibaba Cloudのプレジデント兼Alibaba DAMO Academy責任者であるJeff Zhang氏は、「Alibaba Cloudが独自のサーバーチップをカスタマイズすることは、パフォーマンスの向上とエネルギー効率の改善によるコンピューティング能力の向上を目指すという当社の継続的な取り組みと一致しています」と述べている。
Zhang氏はまた、「近い将来」に同社のクラウドにYitianを搭載したサーバーを提供する予定だとしている。
この新しいチップを搭載した一連の独自サーバー、Panjiuは「コンピューティングの処理能力とエネルギー効率が最適化」され、汎用および特殊な人工知能(AI)コンピューティングと、ストレージサービスの両方に最適化されたものだという。
同社はさらに、これらのサーバーにはコンテナ化されたアプリケーションを含むクラウドネイティブなワークロードの処理を前提として、大規模なデータセンターへの導入を想定したモジュール型の設計手法が使用されていると述べている。
このチップやシステムの提供時期をAlibabaに問い合わせたところ、同社は回答を控えた。
Zhang氏は、同社が今後もIntel、NVIDIA、AMD、Armなどのグローバールパートナーとともに、多様なコンピューティングサービスを提供していくと述べた。
発表によれば、Yitian 710はCPUの整数演算性能を測定する標準的なベンチマークである「SPECint2017」で440のスコアを達成したという。同社は、この数字は現行のArm製サーバープロセッサーを性能面で20%、エネルギー効率面で50%上回るものだと述べている。
オープンソースに関する取り組みの強化
Alibabaは、これらのプロセッサーの開発計画とは別に、RISC-Vアーキテクチャーを採用した自社製チップである「XuanTie」のIPコアのソースコードを公開したことを明らかにした。このプロセッサーは2019年に発表されたものだ。
XuanTieのチップコアのソースコードは現在、GithubおよびOpen Chip Communityで公開されており、これを利用すれば、アリババのCPUコアをベースにした独自のチップを作ることができる。同社は、このCPUアーキテクチャーを利用すれば、ゲートウェイやエッジサーバーなどのIoTアプリケーション用にカスタマイズされたチップを構築できると述べている。
同社は、XuanTieをベースにしたソフトウェアスタック(Linux、Android、AlibabaのAliOSなどの各種OSに対応するためのものを含む)もオープンソース化する。また今後は、開発ツールやソフトウェア開発キット(SDK)などのサービスやサポートも充実させていくという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。