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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

アフターコロナの中国でネット弱者の老人にどう対応したのか

山谷剛史

2020-08-26 07:00

 中国で新型コロナウイルス感染症を抑え込み、拡散させないために「健康コード」が登場した。杭州市政府と杭州に本社がある阿里巴巴(アリババ)が同市でキャッシュレスアプリの「支付宝(アリペイ)」を使う形でスタートさせたもの。中国全土でも、支付宝かそれ以外のアプリで導入された。

 健康コードとは、行動した地域の感染度から危険度の高い順に赤色、黄色、緑色の3色で表示されるQRコードになる。例えば、同じマンションで感染者が出ると赤色になる。オフィスやショッピングモールの出入口、路線バスや地下鉄の乗降時に関所が設けられ、健康コードを提示して緑色なら通過できるという仕組みだ。日本から中国への訪問者は、日本で新型コロナウイルスの感染者が出続ける限り赤色判定となり続け、隔離が余儀なくされるだろう。

 さて、スマートフォンは中国での生活において、持っていないと不便を強いられる。銀行口座とひも付けられた「支付宝(アリペイ)」や「微信支付(ウィーチャットペイ)」などのキャッシュレスでの支払いほか、食事をするにも映画を見るにも「美団」などのアプリが必要だし、「滴滴(Didi)」などの配車サービスを利用するにも、何をするにもスマートフォンアプリが不可欠だ。ただ、たまたまスマートフォンが手元になかったり、バッテリーが切れたりしたとしても、不便ではあるが商店で食材を買うこともできるし移動もできる。生活は可能だった。

 ところがアフターコロナで状況は変わり、スマートフォンは必須になる。病院を利用するにしても、スマートフォンアプリで予約をしなければいけなくなった。観光するにも健康コードが必須になったほか、健康コードを厳しく強制する地域については健康コードがないと路線バスや地下鉄に乗れなくなるのだ。

 8月8日では中国東北部の大連で、老人が地下鉄に乗ろうとしたところ健康コードを用意していなくて「誰も健康コードをくれなかった」と大声で騒ぎ立て、強引に侵入を試みるも地下鉄スタッフが食い止めたニュースが話題になった。また19日には東北部のハルビンで、バスに乗車する際に老人が健康コードを持ち合わせずに乗車し、頑なに発車を待とうとするもバスの運転手は運転せず、乗客から老人へ非難の声が飛び交ったことが話題になった。

 中国ではインターネットを利用する世代と、利用しない世代でくっきり分かれている。1970年代後半生まれからがインターネットや各種デバイスを利用する世代であり、つまり2020年時点では45歳を境にインターネット利用者が大きく変わる。特に60歳以上の世代のインターネット利用者は、昨今のスマートフォンの普及で増えてきたとはいえまだまだ少なく、フィーチャーフォンを利用する人も目立つ。年老いて新しいスマートフォンの使い方を学びたくないという人も多くいる。多くの老人が買い物をする市場ではキャッシュレス社会と言われて久しい中国においても現金取引が当たり前だ。病院への通院はスマートフォンでの事前予約の普及が進んでいる中、病院では受付番号が書かれた紙を取りに多くの老人が列をなす。

 もっとも、中国全土の都市で大連やハルビンのように厳格というわけではない。例えば天津では同居する家族の健康コードを印刷すれば代わりになるとし、また例えば、北京では身分証が代わりになるとした。筆者が直接確認したところでは、西南部の昆明では老人や学生は健康コードなしでバスに乗れるという。また健康コードを持つ同居人が同行すればよいとする都市もある。中国全土的なルールはなく各都市で対応や対策はまちまちなで、他の都市に移動したときは異なるルールが適応される。

 こうしたネットデバイスによる普及の格差が激しい中、インターネット非利用者の多い老人世代をさすがに見捨てるわけにはいかないのか、最近では、アフターコロナの状況におけるインターネットを利用できない老人問題について取り上げるニュースを見るようになった。さすがにアフターコロナに適応できない多くの人々を切り捨てるというわけにはいかないようだ。

 政府メディアの人民網によれば、対策として一部のマンション団地にスマートフォンが使いこなせない人たちのためのヘルプスタッフを配備しているとのこと。また老人向けのスマートフォンの使い方教室を用意し、使い方を学ぶという動きもあるという。しかしこの手の教室は、老人がメリハリのある日々を送ったり、仲間を作ったりすることが目的であると筆者の在中経験から感じる。

 結局のところ、健康コードでの人々の管理下においてインターネットが苦手な老人が不自由なく暮らせる根本的な解決手段としては、老人と現役世代がともに同じ屋根の下で暮らし、移動や旅行のときには現役世代が同行するしかないようだ。

 最後に私事となるが、中国のスマートな新型コロナ対応について著書『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』(星海社)にまとめた。よろしければお手にとっていただければ幸甚だ。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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