本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏と、Citrix Systems シニアバイスプレジデント 兼 Wrike ジェネラルマネージャーのAndrew Filev氏の発言を紹介する。
「ITサービス業界は労働集約から知識集約的な仕事の仕方に大きく変えていくべきだ」
(NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏)
NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏
NTTデータは先頃、2021年度(2022年3月期)第2四半期(2021年4〜9月)決算を発表した。本間氏の冒頭の発言はその発表会見で、ITサービス業界がさらなる業績向上を図るための施策を問われて答えたものである。
NTTデータの2021年度第2四半期決算は、表1に示すように、売上高が前年同期比12.2%増、営業利益が同71.0増と好調な結果となった。
表1:2021年度第2四半期(2021年4〜9月)の業績の概要(出典:NTTデータ)
本間氏によると、セグメントごとの売上高でも、公共・社会基盤は「テレコムおよび中央府省向けサービスの規模拡大」、金融は「銀行向けサービスの規模拡大」、法人・ソリューションは「製造業および流通・サービス業向けサービスの規模拡大」、北米地域は「ヘルスケア向けサービスの規模拡大や為替の影響」、EMEA(欧州・中東・アフリカ)と中国は「スペインを中心とした欧州での規模拡大や為替の影響」など、全ての分野で増収となった。
今回の決算における同社の増収の伸びは、ITサービスの専業最大手ながらも同業他社をリードし、一層の存在感を示した。しかし、グローバル企業の業績に目を向けると、直近四半期の売上高で、Microsoftは22%増、Appleは29%増、Googleは41%増と、増収の勢いが違う。もちろん、業態が異なるので一概に比較はできないが、「日本のIT企業の業績はなぜもっと大きく伸びないのか」と感じている人も少なくないだろう。
今回の会見では、そんな率直な質問も。それに対し、本間氏は「もちろん、当社としても好調な業績にもっと勢いをつけたいところだが、日本のITサービス企業においては、そのために解消しなければならない課題がいくつかあると考えている」と答えて次の3つを課題として挙げた。
1つ目は、人材不足。ITやデジタルの人材が不足していることは、ITサービス業界に限らず既に指摘されている。これに対し、本間氏は「まずは育成とリスキリングに一層注力していかないといけない」と話した。
2つ目は、パートナーエコシステムの拡充。「社内だけでは足りないリソースをパートナー企業と連携してプロジェクトチームとして仕事を進めていく仕組みづくりをもっと強化すべきだ」(本間氏)
そして、3つ目に挙げたのが「日本のITサービス業界はもっとアセットを活用すべきだ」と述べた後の冒頭の発言だ。労働集約型から知識集約型への転換が必要なことは、以前から指摘されてきたことではあるが、本間氏は改めてこの課題について強調した、ように筆者には感じられた。それだけ、根深い問題であることを印象づけた発言だった。