NECは11月16日、大量の映像から分析対象を高速・高精度に検知できる技術「漸進的物体検知技術」を開発したと発表した。処理能力に制約があるエッジ機器でも大量の映像に対する物体検知について約8倍の速度で処理できるという。同社では開発強化や実証を経て、2022年度の製品化を目指す。
同技術では、高速だが精度が劣る人工知能(AI)モデルと、高精度だが演算量の多いAIモデルを組み合わせ、それぞれの利点を生かして効率的に複数の画像を処理することにより、高速・高精度な物体検知を可能にする。
漸進的物体検知技術の効果(出典:NEC)
リアルタイムな映像分析には、カメラなどのセンサーの近くのエッジ機器で処理するのが望ましい。しかし、エッジ機器では廃熱や冷却が難しく消費電力が制限されるため、高性能サーバーで使用されるGPUなどの高性能プロセッサーを利用できず、処理能力に制約がある。
またディープラーニング(深層学習)を活用した物体検知ソフトウェア(物体検知AIモデル)によってカメラで撮影された映像から分析対象となる物体を探し出す物体検知処理を行う場合、精度の高いAIモデルは演算量が多いため、処理能力に制約があるエッジ機器では大量の映像処理が難しい。一方、演算量を削減した高速なAIモデルを利用する場合、精度が低下して映像分析に求められる認識精度要件を満たせない。
漸進的物体検知技術の処理イメージ(出典:NEC)
漸進的物体検知技術の適用対象(出典:NEC)
漸進的物体検知技術を適用することで、処理能力に制約があるエッジ機器でも大量の画像の中から分析対象を効率的かつ高速・高精度に検知し、リアルタイムでのカメラ映像の処理や複数台カメラの同時処理を可能になる。
具体的には、まず高速なAIモデルによって粗い精度で複数検知し、その検知結果をまとめて高精度なAIモデルで処理することにより検知対象を徐々に(漸進的に)精緻化し、分析する。これにより、カメラ映像から車両のナンバープレートを検知する例では、精度の高いAIモデルを単独で使用する場合に対して、検知精度を維持しつつ、約8倍の速度で処理できるようになる。
また同技術では、特定の検知対象や特定の処理方式に限ることなく、「人」や「人の関節点」、「車両」や「車両のナンバープレート」などの検知対象に応じた多様な物体検知処理に対応できる。さらに、特定のAIチップに限ることなく適用することができ、AIチップが共通して持つ、多数の演算リソースを内部に持つという特徴を活用し、AIチップ内部の演算能力を使い切ることができる。