前回の記事では、マーケティング分析や、広告配信に向けたユーザーのセグメント化などに用いられるカスタマーデータプラットフォーム(CDP)に焦点を当て、データ管理と活用に関する考察を展開した。
しかし、CDPで用いられるデータは、分析に適した構造化データが主であり、企業が抱えるデータのほんの一部に過ぎない。本稿では、より広義な意味でのデータとして、企業に蓄積されているデジタルアセットの特徴と活用方法を考えていく。
企業には膨大な量のデジタルアセットが蓄積されている
前回は、CDPを用いたデータ活用について解説したが、CDPで用いられているデータは、構造化データと呼ばれる特定の構造となるようにあらかじめ定義され、整形された物が大半だ。構造化データは、住所や電話番号、メールアドレスのような明確なルールに基づいて整形されているため、分析目的の利用に適している。
一方、企業に蓄積されているデータの大半は、非構造化データと呼ばれるネイティブな形式のまま保存されているデータだ。例としては、メールやアンケートの自由回答、自社メディアやSNSに投稿したコンテンツのようなテキストデータ、写真やイラストのような画像データ、その他にも音声データや動画データなどが挙げられる。
企業内に蓄積されているデータの8割が、このような非構造化データだと言われており、データの収集および入手自体は容易だが、非構造化データは構造化データとは違い、意図的な整形がなされていないため、分析および分析に向けた準備段階での処理に専門的な知識が必要となるという難点がある。
そのため、CDPによるデータ活用では、非構造化データを限定的な形で利用することはありつつも、扱いきれずに持て余しているというのが現状だ。
非構造化データの多くは、特定の目的を果たすために作られ、そのまま死蔵されてしまうことが多いが、企業に蓄積されているデータを再利用できれば、低コストで大きな効果を生み出す可能性を秘めている。特に、マーケティングを目的として作られた非構造化データは、「デジタルアセット」と呼ぶにふさわしい可能性を持っている。