スポーツウェアの製造と販売を手掛けるデサントは、世界のトップアスリートのニーズやアイデアに応えることで、常に斬新な発想で今までにないモノづくりを目指し、高機能・高品質・デザイン性に優れた製品を送り出している。
その最先端の研究開発拠点が「DISC(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)OSAKA」になる。2018年に大阪府・茨木市に開設され、スポーツアパレルの研究開発を行っている。デサント R&Dユニット スポーツパフォーマンス・研究開発課 課長の戸床文彦氏によると、DISC OSAKAのコンセプトは「世界一、速いウェアを創る」。これには2つの意味合いが込められており、1つは競技で勝つための「スピード」を追求するということ、もう1つは開発するウェアを世界市場で他社に先駆け世に出していくということだという。
DISC OSAKAの外観(写真提供:デサント)
デサントでは、1950年代から着手した野球やスキー用のウェア開発を先駆けとし、1970年代には流体力学をスポーツウェアの開発に取り入れ、スキー滑降における立体裁断のダウンヒルスーツ開発など、「創造」と「挑戦」という創業期から受け継がれている精神の下、新しい発想と新しい技術を掛け合わせ、これまでにないウェアを作り続けている。
「『速いものは必ず美しい』をコンセプトにウェアを設計している。機能はデザインであり、デザインは装飾ではなく、機能を含ませて組み立てている」(戸床氏)
DISC OSAKAは、「基礎開発」「グローバル戦略素材開発」「製品開発」「品質開発」「知財戦略」の5つの役割を担っている。
設備・機器としては、独自開発の「サーマル発汗マネキン」をはじめ、人工気象室、人工降雨室、全天候型トラックなどを設置。型紙作成から縫製まで、サンプル作成の全工程を行うプロダクションスタジオもある。機能の開発、製品化、開発した製品の評価検証という一連の工程をDISC内で完結できることで、高機能・高品質な商品をスピード感を持って生み出すことを目指している。
最近では、3Dスキャナーでアスリートの人体を測定して立体モデルを作成できるようにし、そのモデルを使って流体解析や風洞実験を行っているという。
DISC OSAKAの研究開発から生まれた最新の素材が「Schematech」になる。これは、「Schema」(設計、構造)と「Technology」(技術)を融合させた造語で、1枚の生地の中で特殊な織り構造・編み構造を駆使することで、生地を切り替えることなく部分的に機能性を付与・変化させることをコンセプトとしている。
糸を操って生地を設計・構築していくプロセスが、設計や構造などの意味を持つ「Schema」と合致し、デサントがこれまで培ってきたテクノロジーを用いながら1着の製品として仕上げていくといったストーリーを意味づけているという。