2022年、企業におけるIT活用の最大のテーマは引き続き「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」だ。そこで、経済団体や企業の年頭所感から印象的な発言を取り上げ、そこから4つのキーワードを筆者なりにピックアップしてみた。
経済同友会と日本商工会議所のトップは何を語ったか
最初に紹介するのは、経済同友会 代表幹事の櫻田謙悟氏(SOMPOホールディングス グループCEO 取締役 代表執行役社長)の発言である。同氏は「年頭見解」の中で、「私たち企業経営者は強い覚悟を持って、イノベーションと社会変革に取り組んでいく」と明言。その上で次のように述べた(写真1)。
写真1:経済同友会 代表幹事の櫻田謙悟氏(経済同友会「年頭見解」会見より)
「イノベーションに満ちた日本を目指すために、まず、規制の刷新に取り組まなくてはならない。コロナ禍を奇貨として、オンライン診療や服薬指導、オンライン授業、テレワークなど、従来『できない』と思い込んできたことが実現した。これをさらに前進させ、ニューノーマルとして定着・拡大させる必要がある」
「規制体系の設計思想そのものも根本的に見直す必要がある。前例のないアイデアを、試行錯誤を通じてビジネスモデル化し、社会実装につなげることから成長が生まれ、生産性が向上し、機会が広がる。この前提に立って、規制体系を『事前規制型から事後チェック・検証型』へと転換すべきである」
「同時に、既存の組織や権限の枠を超えた最適化が可能となるデータ・デジタル時代にふさわしい形へ、競争法制や個人情報保護法制、各種業法規制や働き方に関するルールを、抜本的に再構築することが不可欠である」
以上の櫻田氏の発言から、キーワードとして挙げたいのは「規制改革」である。筆者の記憶では、経済団体のトップが規制改革についてこれだけ踏み込んだ発言をしたのは初めてではないか。
とりわけ、日本の社会では、DXによって高い効果を得られるかどうかにおいて最大のネックとなるのが、旧態依然とした規制にあると言って過言ではない。経済界からのこうした強い要望に対し、行政が今後どう動くか、注視したい。
次に紹介するのは、日本商工会議所 会頭の三村明夫氏(日本製鉄 名誉会長)の発言である。同氏は年頭所感の中で、商工会議所における2022年の重点的な取り組みの1つとして「デジタル活用による中小企業の体質強化」を掲げ、次のように述べた(写真2)。
写真2:日本商工会議所 会頭の三村明夫氏(日本商工会議所のサイトより)
「これまでも幾多の困難を乗り越えてきた日本の中小企業は、さまざまな変化に柔軟かつ迅速に対応できる潜在的な変革力を有している。中小企業経営へのデジタル活用は、生き残りをかけた自己変革の有力な手段であり、コロナ禍で加速したデジタル化の流れを、業務効率化に留まらず、越境EC(電子商取引)などを通じた販路拡大、さらには業態転換などのビジネス変革にまで広げる経営力向上の柱として強力に支援していきたい」
以上の三村氏の発言から、キーワードとして挙げたいのは「中小企業の体質強化」である。同氏は2021年の年頭所感でも「中小企業のデジタル化推進」について言及したが、今回は中小企業にとってデジタル活用が、「生き残りをかけた自己変革の有力な手段」とまで表現したのが印象的だった。