NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とNTTアノードエナジー(NTT AE)は3月28日、NTT Comのデータセンターを利用する顧客向けに、再生可能エネルギー(再エネ)を選択できる電力メニューの提供を4月1日に開始すると発表した。
これは、選択した再エネに関して、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出がないことを示す「環境価値」を合わせて提供するものという。対象となるデータセンターは、4月時点で「横浜第1データセンター」「埼玉第1データセンター」「東京第5データセンター」「東京第8データセンター」「東京第11データセンター」の5カ所で、2023年度中にNTT Comが提供するクラウドサービスの全サービス拠点においてNTT AEによる再エネの提供が開始される予定。
NTT Com 代表取締役副社長 副社長執行役員の菅原英宗氏は会見で、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルに向けた同社の取り組み「NTT Green Innovation toward 2040」について説明した。2020年10月、経済産業省は2050年までにカーボンニュートラルを目指すグリーン成長戦略を発表しており、こうした動きを受けたものとなる。
NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 副社長執行役員の菅原英宗氏
同社の取り組みは、自社のグリーン化である「Green of ICT」と、社会・顧客のグリーン化である「Green by ICT」で推進される。自社では運営するデータセンターへの省エネ設備の導入やグリーン調達の拡大、電力消費量の削減などに取り組む一方で、データセンター利用者向けの取り組みの一つとして、再エネを選択できる電力メニューの提供を開始する形となっている。
続いて、プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部 担当部長 データセンタープロダクトオーナーの松林修氏は、データセンターのカーボンニュートラル化に向けた取り組みを説明した。
まず、同氏は「データセンターで専用発電所を含めた幅広いグリーン電力が選択可能になった」といい、クラウド事業者やサービス事業者などではデータセンターの消費電力が事業全体で使用する電力の95%を占めるケースもあると指摘。データセンターで使用される電力のグリーン化に対する市場からの要望は大きいと述べた。「データセンターのグリーン化が全体の通信のグリーン化や脱炭素に直接的に貢献する」(松林氏)
NTTグループ全体では、電力消費量を削減していく省エネルギー化と、使用する電力の再エネシフトの両軸で対応していくとした。
同氏はデータセンターで使用される電力のおおよその内訳も紹介。主に利用者がサーバールームで使用する電力が約60%、空調設備などのデータセンター側が使用する電力が30%強、電力変換に伴うロスなどが数%だとした。その上で、省エネルギー化によって電力消費量を削減していくのに加えて、2030年に自社で使用する電力のカーボンニュートラル化を目標としている。さらに、今回新たに提供される電力メニューによって、データセンター利用者が使用する電力に関してもカーボンニュートラルに近づけていくとした。
具体的な提供メニューについては、いずれもトラッキング付きの「非化石証書」による環境価値の提供が可能となっている。太陽光、地熱、バイオマスなどの電源種別の指定、非FIT/FITの指定などが可能。いずれも基本的には個別見積りとなる。
なお、太陽光発電などを指定した場合にもサーバールームに対して太陽光発電による電力だけを配送する専用回線などが設置されるわけではなく、環境価値の取引上の問題として処理されるものなので、例えば悪天候が続いて太陽光発電の発電量が減少するようなことがあったとしても即座にサーバールームに対する給電量が変動するような形にはなっていないとのことだ。
新たに提供開始される再エネの選択メニュー