リコー版「kintone」、10月から販売--中小企業の業務プロセスを効率化

阿久津良和

2022-04-28 08:00

 リコーとサイボウズは4月27日、デジタルサービス事業での業務提携を発表した。国内外での伴走型サポートによるデジタルトランスフォーメーション(DX)加速を目的に、両社で開発した「リコーブランド版kintone(仮称)」を10月から国内市場向けに販売を開始。今後のグローバル展開も視野に含め、2025年度までに100億円規模のビジネス創出を目指す。

 今回の業務提携についてサイボウズ 社表取締役社長 青野慶久氏は「互いが見ている世界観が近いことが重要。(今回の業務提携で)リコーの期待に応えられるか自信がないところもあるが、(われわれにとって)素晴らしい経験になる。しっかりとついて行きたい」と語った。

「ノーコード/ローコード基盤を自社開発するのは力不足」

 リコーは2020年11月から「デジタルサービスの会社」への組織体制刷新を目指し、2021年4月から5つの事業領域を担うビジネスユニットとグループ本社に体制を刷新した。サイボウズとの業務提携は、オフィスや現場をデジタル接続し、業務の流れを改善するサービスを提供するリコーデジタルサービスビジネスユニット(RDS部門)の強化が目的だ。

 RDS部門は2019年にコンテンツサービス基盤「DocuWare」、2022年にロボティックプロセスオートメーション(RPA)の「AXON IVY(アクソン・アイビー)」を企業買収で自社製品化しているが、リコー 代表取締役 社長執行役員 山下良則氏は「さらなる強化領域(を残していたの)が宿題だった。ここを埋めるのが『kintone』」(同社)であると説明した。

 サイボウズの「kintone」は2万4000社が契約し(2022年4月時点)、導入担当者は非情報システム部門が93%を占める(2021年12月末時点)ノーコード/ローコード開発実行基盤である。今回の業務提携に伴い、kintoneをリコーへOEM供給し、業務改革基盤への進化を施すリコーブランド版kintoneを中小企業向けのデジタルプロセス基盤として提供可能とした。

 リコーの山下氏は「これまで現場が主体で業務改善に取り組むのは難しく、SIer(システムインテグレーター)にお願いする領域で、中小企業には手が届かなかった」と現状を分析しつつ、「RSI(RICOH Smart Integration、国内では「EDWプラットフォーム」)でドキュメントとデジタルプロセス領域の業務革新を実現するのがベストだが、ノーコード/ローコード開発基盤を自社開発するのは力不足」だったと業務提携に至った背景を語った。

 サイボウズの青野氏も「リコーが持つグローバル販売ネットワークを活用し、米国、特にわれわれが達していない欧州で提供する」のが業務提供の主目的だと述べている。

RSIの構成 RSIの構成
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RSIにkintoneが加わった一例 RSIにkintoneが加わった一例
※クリックすると拡大画像が見られます

 リコーはRSIの日欧米への展開を視野に入れている。北米は2022年中、欧州は1年内にテストマーケティングを開始し、既存ソリューションであるAXON IVYとのすみ分けを図ることで、RSIによるビジネス創出規模を500億円(うちリコーブランド版kintoneは100億円)を2025年までの目標として掲げた。

 同社は民間企業にとどまらず、政府や自治体、公共団体への展開も目指す。サイボウズの青野氏も、米国で獲得している720サブドメインを「1万社(まで押し上げるの)が一つの目標値」だと語った。

(左から)リコー 代表取締役 社長執行役員 山下良則氏、サイボウズ 社表取締役社長 青野慶久氏
(左から)リコー 代表取締役 社長執行役員 山下良則氏、サイボウズ 社表取締役社長 青野慶久氏

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