海外コメンタリー

リモートワーク時代の「プレゼンティズム」が無意味な仕事を生む

Owen Hughes (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2022-08-04 06:30

 リモートワークの導入によって、知識労働者の働き方は柔軟性を増した。ところが、オフィス勤務時代の古い慣習が、誰も望んでいない未来の働き方を生み出してしまう可能性がある。

暗い部屋でPCに向かう人
提供:Getty Images

 ソフトウェア企業のQatalogとGitLabが発表した調査レポートによれば、職場の上下関係に起因する不平等と、リモートワークに使えるツールの普及が組み合わさることで、生産性を低下させ、スタッフの長時間労働につながる「デジタルプレゼンティズム文化の蔓延」が生まれつつあるという(訳注:プレゼンティズムとはもともと、体調不良を押してでも無理に出勤すべきであると考えるような職場文化を指すが、ここで言う新たなプレゼンティズムは、リモートでもしっかり働いていることを示そうとして、かえって生産性が下がっているような状況を指している)。

 2000人の知識労働者を対象として実施されたこの調査では、回答者の54%が、リモートで働いている間にも、オンラインで存在感を示し、自分の存在を可視化しなければならないというプレッシャーを感じていることが明らかになった。仕事がオフィスだけで行われるものではなくなったことを受けて、従業員は、自分の仕事が認められるように、これまでにはなかった作業を行うようになった。これは多くの場合、必要以上に電子メールやメッセージに返信したり、多くのミーティングに出席したり、共有文書にコメントや返信を付けていることを意味している。

 その結果、知識労働者は以前よりも1日当たり67分間余分に仕事をするようになった。これは、1週間当たり5.5時間に相当する。このことと、果てしなく届くアプリの通知が組み合わさることで、生産性が下がるとともに、労働者は不満やストレスを感じ、仕事とプライベートを切り替えられなくなっている。

 QatalogとGitLabが実施した調査「Killing Time at Work '22」によれば、新しいリモートワークの職場が抱えている問題の多くは、仕事がいまだに同一の就業時間中(例えば9時5時)に行われているという事実に帰着するという。

 QatalogとGitLabは、このやり方は時代遅れであり、今の仕事の進め方を反映していないと主張している。そもそも、知識労働者はテクノロジーによっていつでも仕事ができるようになっており、全員が働く時間を調整する必要はなくなっている。

 両社は、従業員が働く場所だけでなく、働く時間も柔軟に決められる非同期な働き方の方が優れたソリューションだと述べている。

 レポートの著者らは、この柔軟性を取り入れれば成果の質も向上すると主張している。回答者の81%は、自分で仕事のスケジュールを決められる自律性がある方が生産性が高く、仕事の品質も高まると感じていた。レポートには、「企業は常に創造性を期待できるわけではできない。部屋にホワイトボードを置いて、1時間ブレインストーミングをしたからと言って、創造的なアウトプットが得られるとは限らない」とある。

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