ガートナージャパンは11月1日、最高情報責任者(CIO)とテクノロジー幹部を対象に毎年実施している「CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ」の最新版の結果を発表した。組織のデジタル投資に対する成果にCIOが苦心していることが分かった。
調査には、81カ国のCIOなどのITリーダー2203人(日本から204人)が回答した。回答者の組織の売上高/公的機関の予算総額は約15兆ドル、IT支出総額は3220億ドルになる。
それによると、まず過去2年間のデジタル投資の目的では、「オペレーショナル・エクセレンスの向上」(53%)が最も多く、「カスタマーエクスペリエンス/市民エクスペリエンスの向上」(45%)が続く。「売り上げの拡大」は27%、「コスト効率の向上」は22%だった。
2023年に投資を増やす領域は、「サイバーセキュリティ、情報セキュリティ」(66%)や「ビジネスインテリジェンス、データアナリティクス」(55%)、「クラウドプラットフォーム」(50%)が高く、「人工知能(AI)」は32%、「ハイパーオートメーション」は24%にとどまった。
回答者の95%は、さまざまなステークホルダーの期待事項が対立していることによって、デジタルトランスフォーメーション(DX)のビジョン策定に苦労していることが分かった。CIOはステークホルダーへの「配当」を実現するために、評価指標を階層化して提示し、関連するデジタル推進全体における相互依存の関係を伝達、実証した上で、サイロ化している複数の推進施策を調整する必要があるという。各デジタル推進部門のリーダーにコンタクトし、「改善」の意味と改善の程度を測定する方法を理解し、各種推進施策でのテクノロジーの成果指標とビジネスの成果指標を階層化して全体像を示せば、説明責任の連鎖を特定がしやすくなり、「配当」を実現できるという。
また、デジタル推進を加速させるには、ビジネス部門リーダーへの戦略的な関与が必要なものの、CIOは「独力でする」と考える傾向にあった。「イノベーション/コラボレーション・ツール」の主たる提供者では、CIOの77%(日本は70%)が「IT部門の従業員」と回答したのに対し、「IT部門外の従業員」の回答は18%(日本19%)にとどまっている。
この結果について、アナリスト バイスプレジデント兼ガートナー フェローの藤原恒夫氏は、CIOが「デジタルの提供はIT人材が行う」という既成概念にとらわれ、デジタルの俊敏性を阻害すると指摘する。CIOは、デジタルの価値を短期で実現するために、IT部門以外の人材(特にビジネステクノロジスト=テクノロジー理解があるビジネス部門人材)へ、デジタル化された能力、資産、チャネルを構築するために必要なものと権限を提供すれば、ビジネス目標の早期達成に役立つ可能性があるという。
多くのCIOがデジタルを推進するIT人材の雇用と定着に苦労し、調査では人材の調達先をあまり開拓していないことが分かった。インターンシップや大学との連携で学生を活用している企業は12%(日本は3%)しかなく、ギグ・ワーカーの活用は23%(日本は15%)にとどまっていた。