In Depth

週休3日制がもたらす影響--短い勤務時間で成果を出す働き方を考える - (page 4)

Owen Hughes (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2023-01-10 07:30

 「私にとって最も驚きだったのは、従業員が本当に強い責任感を持ち、多くの成果を出しつつあることだ」

米国企業のHealthwiseは2021年に週休3日制を導入後、人員削減数が極端に減少した。(提供:Healthwise)
米国企業のHealthwiseは2021年に週休3日制を導入後、人員減が落ち着いた。
提供:Healthwise

 従業員の立場から見た週休3日制の魅力は一目瞭然だ。特に、燃え尽き症候群や仕事への満足度の問題が深刻な場合にその効果は大きい。労働者は今、自分の幸福に重きを置いており、雇用主に対しても同様であることを期待している。週休3日制を運用する企業は、激しさを増す雇用市場においてその制度を自社の強みとして生かすことができる。

 「週休3日制を採用している企業に話を聞くと、以前は生産性と従業員の幸福のためだという回答ばかりだった。しかし、現在では人材確保が一番の理由だという。企業は従業員をいかに留められるかを懸念しており、週休3日制は従業員に人気の制度であることを知っている」とRyle氏は語る。

 週休3日制にはまた、環境への潜在的なメリットという面もある。通勤にかける週あたりの時間を減らせば炭素排出量を削減できる可能性が(理論的には)ある。労働時間の短縮がもたらす環境への影響を正確に把握するにはさらなる研究が必要となるが、2021年の英国のある分析では、週休3日制への移行により同国のカーボンフットプリントを年間21.3%減らすことが可能だと結論付けている。Schor氏は、ドイツ、デンマーク、フランス、オランダなどは、炭素排出量と勤務時間の両方が低い水準にあることを自身が実施した調査で指摘している。

 週の勤務時間が短縮されれば、持続可能性の高い習慣が促される可能性があることも議論されている。仕事の時間が減ると、料理をする時間が増え、ファストフードやジャンクフードへの依存を少なくできるかもしれない。渋滞に巻き込まれたり、人通りの多い道を歩いたりといったことが減るので、有害な汚染物質にさらされる機会を少なくできる可能性がある。週休3日制により、運動やボランティア、地域社会への還元、あるいは休息のための時間も得られる。そのすべてが個人、そして個人が属する社会に利益をもたらす。

提供:Getty Images
提供:Getty Images

特効薬はない

 週休3日制という考えに流されるのはたやすい。先に導入した企業が極めて肯定的な結果を出している場合は特にそうだ。しかし、そのような成功事例にはかならず課題も付きまとう。勤務時間を短縮することで新たな困難が浮上し、現在その解決に取り組んでいる企業もおそらく存在するだろう。

 たとえばカスタマーサービスの担当者全員が金曜に出勤しない場合は困難が増すだろう。顧客やクライアントが木曜の午後5時半に緊急事態となり、その対応を月曜まで待たなければならないとすれば納得いかないはずだ。週休3日制によって、会社の人との非公式の交流時間が減る可能性もある。交流は、職場の文化や、従業員がチームの一員であることから得られる所属意識の形成に重要な役割を果たしている。

 また、雇用主が週休3日制に合わせて仕事のプロセスや人材管理を変更しない場合は仕事が激化するリスクもある。これは勤務時間の短縮がもたらすと見られた従業員の幸福というメリットに反することになる。細かく刻まれたタイムシートや報告データ、あるいは使ったことのない新たなKPIを経営陣が突然導入し始めれば、従業員に多大なストレスが加わることになる。

 おそらく週休3日制の最大の課題は、経済でさらなる不平等を生み出す脅威があることだ。知識労働者にとって週休を1日加えるのは容易なことかもしれない。しかし、特定の分野における制度の導入は、不可能とまでは言わないがかなり難しい。

 Ryle氏は、週休3日制が経済のすべての問題を解決する魔法ではないと認めている。「これはゼロ時間契約を廃止に追い込むものではない。ゼロ時間契約は労働者に不確実な仕事を与えるもので、制度上、労働者の権利向上が非常に難しい」とRyle氏は語る。

 「こういった制度を業界ごとに導入するのは極めて難しい。もっと上の国家政策の一環として目を向けるべき事柄だ」

 週休3日制導入で成果を得たこれら企業で、生産性が長期的に後戻りする可能性はあるのだろうか。おそらくはある。週休3日制は、従業員にとってハードワークを促す強力な動機となる。そのような制度が失われるリスクがある場合は特にそうだ。そうだとすれば、英国の実証実験は、過度に良い評価の理想を描いている可能性もあり、それが長期的な結果にはつながらないかもしれない。

 これは雇用主が検討しなければならないことであるが、一方で、従業員が勤務時間の短縮によって得られる自由な時間は、短期的なものを超えていることを示す証拠もある、特に、勤務時間の短縮を数年運用し、肯定的な成果を見続けてきた企業に目を向けた場合はそうだ。

 自身も週休3日制で働くBurgess氏は、反論するのは非常に難しいと述べ、「ビジネスにとって、特にCOVID以降は、従業員のメンタルヘルスと幸福が非常に重視されるようになった」と続けた。

 「これまでは多くの企業が従業員のストレスやオーバーワークについて表面的にしか対策できなかったのではないか。だから、世界中で週休3日制の導入に成功する企業が現れるのを見て、多くの組織が『当社の従業員の生活にも実質的な違いをもたらしてくれるかもしれない。きっと当社にも良い影響を与えるはずだ』と言っているのだと思う」

 英国の実証実験に参加している企業は、週休3日制が従業員に害を及ぼすものならばこの制度を廃止するということを明言してきた。おそらくは、6カ月後、1年後、あるいは5年後にそうなったとしても同様だろう。企業は結局、週休2日制に代わる制度について試行錯誤しながらも、生産性や人材確保、あるいは収益を損なうような制度を維持したいとは思わないからだ。

 最悪の状況は、雇用主がなにも試さないこと、あるいは現在のオーバーワークやデジタル負荷を我慢する文化を受け入れることだ。「好況時でも不況時でも、週休3日制を採用することで企業が失うものは何もない。経済サイクルのどの段階にあっても、そのメリットはやがて実現されるだろう」とPang氏は語る。

 「制度の移行をやり遂げることは難しい。しかし、誰にとっても明確なことがある。それは、長期的に見れば、燃え尽き症候群やジェンダー格差といった従来の課題は、勤務時間を増やすことで解決できるものではないということだ」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]