しかし、この世界的なパンデミックが前提を覆し議論を前進させた。強制的なリモートワークへの切り替えにより、働き方がほかに存在すること、さらに多くの場合、その方が効果的だということを証明したのである。生産性とワークライフバランスという長年の問題に対しては特にそう言える状況だ。
働く、休む、遊ぶ
週休3日制に移行することで実現できるビジネス上の利益はさまざまだが、特に従業員のワークライフバランスと幸福に及ぼし得る影響について忘れてはならない。

勤務時間短縮が母親にもたらすメリットは特に無視できないと、4 Day Week Global CEO(退任予定)のJoe O'Connor氏は語る。
提供:4 Day Week Global
「明らかに、従業員にとっては人生を変えるものとなる。その点を見失ってはならない」と4 Day Week Globalの退任予定の最高経営責任者(CEO)であるJoe O'Connor氏は語る。
O'Connor氏はまた、このパンデミックを経験したからこそ、週休3日制のイメージが「絵に描いた餅」から「緊急で実現できるように感じるもの」へと転換できたと確信している。従業員がかつてないほど個人的なニーズに価値を置くようになったからだ。
「パンデミックの期間が個人に何をもたらしたのかについて聞いた話は印象深いものばかりだった。子どもを学校まで車で送り迎えできるようになった、高齢の親戚と過ごす時間が増えた、新しいスキルを学習している、あるいは趣味の時間が増えた、といったものだ。これは個人の生活に信じられないほど大きな違いをもたらす制度だ」
週休3日制を導入した企業で働く従業員もまた、リラックスのため、所用のため、あるいは疲れを癒やす活動への参加のための時間が増えたと報告している。
Kickstarterのトラスト&セーフティアナリストを務め、3人の子どもの母親でもあるChristina Medeiros氏は、病院の予定を入れたり、所用を片付けたりといったこと、あるいは「娘と楽しく過ごすだけだが、最も大切と思われる時間を増やすこと」ができたと語る。
KickstarterのマーケティングオートメーションマネージャーであるBrooke McDaniels氏によると、金曜を休みにすれば、運動や家事、その他身の回りのことができる1日が余分に手に入り、土曜と日曜は好きなように過ごせるようになるという。「やるべきことで頭がいっぱいになる中、それらを潰すための余分な1日があれば、勤務日に仕事にもっと集中できる」とMcDaniels氏は米ZDNETに語る。

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より公平なワークモデル
研究者や経済学者は、ジェンダーによる給与格差を解消する手段としても、週休3日制の可能性に希望を抱く。
男性と女性の給与不均等の大きな要因となっている「母親ペナルティー」。英国財政研究所の調査によると、英国の賃金格差は女性が第1子を産むまでの約10%から始まり、子どもが12歳になる頃には33%まで拡大する。
女性が子どもを産んだ後に復職するとき、多くの場合は時短勤務となり給与が減る。多くはフルタイムの同僚の男性と同じ成果を出しているにもかかわらず、である。組織全体で普遍的に勤務時間を短縮することで、就職あるいは復職する母親にとっての潜在所得が改善される可能性がある。
「従業員全員に週休3日制を導入することで、パートタイムで働く母親や女性の給与アップの機会が増えることは明白だ。週2日の勤務時に日割りの給与が上がった場合、フルタイムの半額相当が支給されるようになるからだ」と、Autonomyのアドボカシー部門長であるIndia Burgess氏は語る。
さらにBurgess氏によると、両親のいずれも在宅勤務で、かつ毎週1日ずつ休日が増えた場合、育児や家事といった「再生産労働」の再配分の機会が増えるという。特に、両親が別々の曜日を休日に設定することで、家事や育児をより均等に分担できるようになるということだ。
このように、普遍的に勤務時間を短縮することは職場における条件の平等化につながる。女性が幹部職に就く機会を増やし、また男性の自由時間が増えることで、いまだに女性に偏っている家族の世話を男性が担う割合が増えるためである。
特にビジネスリーダーにとって魅力的だと実証された週休3日制のメリットの1つは、採用時の強力な武器になることだ。企業の採用担当マネージャーは、技術部門やその他を問わず減少の一途をたどる有能な人材を奪い合っている。そんな中、企業は従業員を惹き付け確保するためのより創造性の高い手段を見つけなければならない。
米国企業のHealthwiseは2021年夏に週休3日制を導入したが、導入前のわずか数カ月の間に250人のチームから20人近いメンバーが離職していた。
週休3日制についての議論が活発化していた頃、Healthwiseは4 Day Week GlobalとエコノミストのJuliet Schor氏に連絡を取っており、同氏とパイロットプログラムの開始について協議した。
実証実験が成功との評価を得るまでに長くはかからなかった。生産性が急速に高まり、従業員の幸福度も増し、人員減が落ち着いたからだ。「制度導入の進捗について当社が取り入れた基準値や従業員の満足度はとても高かった。人員減は大幅に抑えられたため、この制度を維持することを決定した」とHealthwise CEOのAdam Husney氏は米ZDNETに語る。