エヌビディアは、AI・デジタルツインの活用による小売業界の進化とそれを支える同社のテクノロジーについて説明会を開催した。
米NVIDIAは、小売業向けの基盤「NVIDIA アクセラレーテッドAIプラットフォーム」を展開している(図1)。同基盤では、店内に設置されたカメラで収集されたデータを分析する「METROPOLIS」、顧客データなどを用いて商品の需要予測を行う「RAPIDS」、仮想空間でシミュレーションをする「OMNIVERSE」、物流倉庫の運営にロボットを活用する「ISAAC」、顧客とのやりとりにAIを用いる「RIVA」、顧客の好みに応じて商品をレコメンドする「MERLIN」という6つのフレームワークを用意している。
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これらのフレームワークは顧客がそのまま利用できるものではなく、NVIDIAがソフトウェアベンダー/システムインテグレーター(SIer)と共同でソリューションを開発・導入する、あるいは導入企業にレクチャーしながらソリューションの内製化を行う。
エヌビディア エンタープライズ事業本部 リテール担当 ビジネスデベロップメント マネージャーの中根正雄氏(写真提供:エヌビディア)
説明会に登壇したエンタープライズ事業本部 リテール担当 ビジネスデベロップメント マネージャーの中根正雄氏は「こうした事業形態では、エコシステムが重要となる。当社だけではソリューションを提供することができない。パートナー企業と協業しながら作り上げている」と説明した。
小売業では近年、少ない人員での店舗運営や物流倉庫の自動化、商品の需要予測・補充などが求められている。こうした中NVIDIAは、小売店、ファストフード店をはじめとするクイックサービスレストラン(QSR)、サプライチェーン、オムニチャネルの4分野においてAIを活用できるとしている。
小売店の分野では、店舗設置のカメラによるセルフレジでの万引/スキャンミスの防止、来店客や商品棚のデータ収集による陳列の最適化、レジなし店舗の運営などがある。
中根氏は「これらの実現には、カメラで取得された映像を解析し、洞察を得ることが大きなウエートを占めている」とし、2023年1月から提供されている同社のサービス「RETAIL AI WORKFLOW」を紹介した。同サービスでは、特に北米で問題となっている万引の防止や店内の分析を支援する。例えば、複数の監視カメラ間でも特定の来店客を追跡でき、万引の証拠をつかむことが期待される。
QSRでは、来店客の分析や需要予測のほか、AIがドライブスルーの来店客に対応したり、自動車のナンバープレートを認識して商品を予約済みの顧客を把握したりすることがある。
同社はパートナー企業の米スタートアップAiFiと連携し、フランスの大手スーパーマーケット「Carrefour(カルフール)」におけるレジなしショッピングを実現した。AiFiの技術では、ゲートに専用のアプリをかざすと、カメラが来店客および手持ちのバッグなどに入れた商品を追跡し、レジに並ぶことなく自動で支払いが行われる。これにより、省人化だけでなく万引の防止も見込まれる。また、来店客の関節の情報のみを取得しているため、プライバシーの保護も実現しているという。
レジなし店舗について中根氏は「小売業向けソリューションの最終地点」とし、「レジがないことにより、これまで考えられなかった狭いスペースでの出店も期待される」と語った。2023年現在、全世界ではAIを活用したレジなし店舗が約600店あるという。