米Pure Storageは4月26日、オールフラッシュストレージ製品「FlashArray」の新たなファイルサービスの一般提供を発表した。これは、単一のストレージリソースプールからブロック/ファイルサービスをネイティブに提供するものとなる。同社 FlashArray事業部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのShawn Hansen氏にその特徴や狙いを聞いた。
これまでブロックストレージとして提供されていたFlashArrayにNFS/SMBでのファイルアクセス機能を追加した形だが、一般的なユニファイドストレージが「ブロックストレージにファイルアクセス機能を追加(またはその逆)」するなど、基本となるストレージ機能に後付けでプロトコルを拡張していたのに対し、同社はブロック/ファイルの両方の機能をネイティブに備えた「統合型ブロック/ファイルプラットフォーム」をゼロベースで開発したとしている。
同機能はFlashArrayのストレージOSである「Purity」のバージョンアップとして提供され、同社のサポートプログラム「Evergreen」の加入者は無償で利用可能である。
Hansen氏は、従来の統合型ストレージの課題として「複雑化」を指摘した。ブロックストレージとファイルストレージの両方を導入する代わりに統合型ストレージを導入すれば初期費用を削減できるが、新たなプロトコルを後付けで追加していたこれまでの統合型ストレージでは運用管理が複雑化し、結局は高コストとなってしまう。また、一般的なファイルストレージはファイルシステムの最大容量の制約が厳しく、拡張性にも課題があったという。
Hansen氏は「従来型の拡張で“近道(shortcut)”を行くか、“自分たちのやり方(Pure-way)”を貫くかを議論し、最終的にはPure Storage流でブロックとファイルを統合するという方針が決定された。そこから3年を経てようやく発表できたことをとても喜んでいる」と語り、“Truely Unified Block and File Platform”(真に統合されたブロック/ファイルプラットフォーム)だと位置付けた。
フラッシュメモリーの価格低下も急速に進んでいることから、同氏は「5年後にはもうHDD(ハードディスクドライブ)は使われなくなっているだろう」と予想する。そこで求められるのは「フラッシュメモリーに最適化された新しいファイルアーキテクチャー」だという。同氏は、ファイルアクセス用のプロトコルはもはや「古い」ものであるといい、一般的なファイルストレージではファイルシステムの容量が100TBまでに制限されているものも多いと指摘する。
新たなアーキテクチャーは「最新のクラウドアーキテクチャーから学んだ、ブロック/ファイルの両方をカバーする単一のストレージプール」を構成している。基本的にはオンプレミス環境での利用が前提となっているが、技術的にはクラウド環境をオンプレミスに持ち込むような、いわゆるプライベートクラウドの発想と同様のコンセプトだ。ファイルシステムやファイル自体に容量の制約はない。
また、運用管理面でも単一のポリシーでブロック/ファイルの両方に対応できるものを作ったという。さらに「VMware」環境を前提とした“VMアウェア”なストレージ機能を搭載している。ファイルシステム単位ではなく、FlashArray上でにある仮想マシン(VM)ごとの統計やスナップショット、クォータ、ポリシーなどをネイティブに管理できる。従来はファイルシステム単位でのポリシー適用が一般的であったため、同じファイルシステム上に置かれたVMは全て同じポリシーで運用されていた。異なるポリシーを適用したい場合には、別のファイルシステムを準備しなくてはいけないため、運用管理の負担が重くなるという問題があった。
Hansen氏は、新たな統合型ストレージのもう1つの技術優位性として重複排除の効率向上を挙げた。重複排除はファイルシステム単位で行われているため、複数のファイルシステムを併用する場合はそれぞれで独立して処理されていたが、新アーキテクチャーはファイルシステムの容量の制約がなく、VMごとに異なるポリシーを適用するためにファイルシステムを分ける必要もなくなっていることから、単一のファイルシステムに全てのデータを格納可能となっている。このため、重複排除も全データが対象となり効率性が向上するというわけだ。
オールフラッシュストレージでブロックアクセスを行う場合、物理的な記憶セルを直接操作するわけではない。フラッシュメモリーにはデータを書き込み/書き換えする回数に制約があり、寿命が来ると使えなくなる「ウェアリング」と呼ばれる問題が存在する。特定の記憶セルに書き換えが集中するとあっという間に寿命が尽きてしまうため、「ウェアレベリング」と呼ばれる技術でフラッシュストレージ全体のセルを均等に使うようにしている。
Pure Storageのオールフラッシュストレージは、フラッシュメモリー関連のローレベルの処理も全て自社のファームウェアで管理している。これが、同社の「フラッシュメモリー向けの最適化」という部分であり、技術的な強みとなっているところだ。
今回のブロック/ファイルの統合は上位レイヤーの話であり、フラッシュメモリーの物理レベルの制御とは直接関係はない。しかし、実際にはブロックストレージでもブロック単位でデータが見えているわけではなく、ストレージOSのPurityが間に入っていわば仮想化している形となっているため、このレイヤーでファイルアクセスプロトコルをサポートすれば、ファイルでもブロックでも同じように処理し、性能面でも無駄のないシステムが実現できるということだろう。
今回の発表はPurityのバージョンアップという形で実装されており、やや地味な印象を与える取り組みではあるが、単に記憶メディアをHDDからフラッシュメモリーに置き換えたもの、として認識されてきたオールフラッシュストレージが、ついに従来のHDD時代のアーキテクチャーと異なるオールフラッシュならではの設計でファイル/ブロックの統合を果たしたという点で、新たな時代の幕開けとなる大きな一歩と言えるのではないだろうか。