ガートナージャパンは、「ゼロトラストセキュリティ」の概念を具体化する「セキュアアクセスサービスエッジ」(SASE)の4月時点における国内導入状況を調べた結果を発表した。SASE関連サービスの導入率は約4割で、2022年の同時期の調査からわずかに上昇した。
ゼロトラストセキュリティとは、情報システムやデータにアクセスするユーザーやデバイスなどの状況を常時確認、対応することで安全性を確保するサイバーセキュリティの概念。SASEは、ゼロトラストセキュリティを具体化ソリューションカテゴリーとして、Gartnerが2019年に提唱した。
日本企業のSASE関連サービス導入状況(出典:ガートナージャパン)
調査結果によると、導入率が4割を超えたのは、リモートアクセスVPN(オンプレミス型)と、パブリッククラウドと自社拠点のダイレクト接続(マルチプロトコルレイヤースイッチング型)、クラウド型セキュアウェブゲートウェイ(プロキシー)だった。
未導入ながら今後1年以内の導入の意向ありを含めると、調査時点で導入率4割未満の国内拠点のローカルブレークアウト(SD-WAN)やクラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)、海外拠点のローカルブレークアウト(SD-WAN)、ゼロトラストネットワークアクセス(SD-WAN)も4割を超える。
バイス プレジデント アナリストの池田武史氏は、「急速に採用が進んだ2022年までと比較すると、いったん落ち着いた状況になっている可能性があるが、今後新たに、あるいは追加でSASEの各機能の導入を検討する企業は引き続き増えてくると見られる。企業は、在宅勤務やパブリッククラウドなどインターネットを介して発生するトラフィックの増加をセキュアにオフローディングする必要があるが、こうした課題に直面している企業は早急に自社での導入計画を立てることが肝要だ」と分析している。
また調査では、採用済みと今後採用予定のネットワーク関連技術についても尋ねた。調査対象企業の半数以上が無線LANやWAN回線、インターネット接続などを既に導入しており、そのうち今後も増強予定と回答した企業は2割程度だった。
日本企業のネットワーク関連技術の導入状況(出典:ガートナージャパン)
池田氏は、「企業ネットワークでは、オフィスや事業部門へより高速の無線LANの導入、データセンターや工場のネットワークのトラフィックの負荷分散およびセキュリティの確保への取り組みが進んでいる。今後もトラフィックの増加や利用の多様化が進む可能性が高く、まだ旧態依然としたネットワークのままとなっている企業は、アーキテクチャーやテクノロジーの選択を含めたネットワーク計画の見直しに着手することが重要」と指摘する。
ネットワーク管理者は、ネットワークの状態を把握するだけではなく、今後ユーザーが快適出安全にアプリケーションやサービスを利用できているかも把握して対処することが求められるようになるとしている。