Snowflake 製品管理担当 シニアディレクターを務めるChris Child氏は、アプリケーション開発が今後の生成AI/大規模言語モデル(LLM)活用の鍵を握っていると語る一方で、企業が自社のAI戦略を推進する前に「強固なデータ基盤の構築が不可欠」だと強調する。
「Snowflakeは、企業のAI活用を加速させるための多くの強みを持っている。例えば、AIを活用した社内向け/顧客向けのアプリケーションを構築し、われわれのデータ基盤上で直接実行することができる」(同氏)
ただ現在は、多くの企業がサイロ化されたデータを抱えており、AI活用を推進する上での問題となっている。Child氏は「データがサイロ化していると、組織に蓄積された膨大なデータを十分に活用できず、AIモデルの構築や予測精度の向上などが困難になる」と話す。
Snowflakeのテクノロジープラットフォームは、さまざまなワークロードにわたるデータを統合し、それらを単一の基盤で処理できるようにすることを目指している。「これを実現するには高いスケーラビリティーが求められ、われわれにはこの点で強みがある」(Child氏)
Snowflake 製品管理担当 シニアディレクターを務めるChris Child氏
同氏によると、2024年1月時点で1日のクエリー処理数は平均42億回に達している。また、82兆行のテーブルを持つ顧客や、1分間に20万回以上のクエリーを実行する顧客も存在する。さらに、データ保有量の上位5社だけで合計186ペタバイトになる。
Child氏は、「これらの膨大なデータを管理するためには、高度なセキュリティとガバナンスが不可欠である」と言い、Snowflakeは直近の動きとして「Snowflake Horizon」という新たなソリューションにデータのセキュリティやガバナンスの各機能を統合した。データの発見と理解を支援すると同時に、コンプライアンス準拠やアクセス管理、プライバシー保護などにも対応するという。
Child氏はまた、Snowflakeの優位性の一つとして相互運用性も強調する。例えば、「Apache Iceberg」への対応では、外部にホストされているカタログとの連携など、外部データに接続できるよう作業を進めている。
企業がAIの活用を進めるためのステップとして、同氏は次の3つを挙げた。1つ目は、AIの知識がないユーザーでも簡単に利用できるようにすること。2つ目は、開発者などがアプリケーションにAI機能を迅速に組み込めるようにすること。3つ目は、AIモデルのカバナンスを強化し、本番環境に素早く展開できるようにすること。
この領域では、企業のAI活用を支援するフルマネージドサービスとして「Snowflake Cortex」が発表されている。「データの取り込みからベクトル化、モデル構築までを可能にし、テキストや画像などあらゆるものに対して直接的かつシンプルに生成AIモデルを構築できるようにする」(Child氏)
「Snowflake上で構築されるアプリケーションは、『Streamlit』アプリケーションのようなシンプルなものから、SaaSアプリケーションのような複雑なものまで、幅広い範囲に及んでいる。AdobeやPowerSchool、State Streetといった企業がSnowflakeを活用しており、その柔軟性とスケーラビリティーは多くのビジネスにとって価値ある資産となっている」(同氏)
3月には、Mistral AIとの提携が発表された。これにより、Mistral AIのLLMである「Mistral Large」をSnowflake Cortexで使用可能となる。Mistral Largeは独自の推論能力を備え、コーディングや数学に精通し、フランス語、英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語の5カ国語に対応するとのこと。今回の提携について、Child氏は「われわれのゴールは、世界にある最高のLLMモデルを顧客に提供することにある」と説明した。
グラフィックデザインツールを提供するオーストラリア企業のCanvaは、顧客向けアプリケーションのデータ基盤にSnowflakeを導入している。Child氏によると、従来の環境と比べて、機能開発を大きく迅速化したという。これにより、顧客サービスの向上に貢献し、迅速な顧客支援を実現するに至っているとのこと。