マクニカは11月12日、横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市)の屋上広場で実施している「ペロブスカイト太陽電池 環境省実証事業」において、2024年度の取り組みを説明した。異なる塗布方法や設置方法を採用したペロブスカイト太陽電池モジュールを設置し、発電量などを調査する。
実証実験は横浜港大さん橋で実施されている
今回の実証事業は、マクニカとペロブスカイト太陽電池の発明者である桐蔭横浜大学 特任教授の宮坂力氏が代表取締役社長を務めるペクセル・テクノロジーズ、薄膜加工技術を持つ麗光の3社が、環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択され実施しているもの。2023年度より3年間の技術開発・実証事業になる。
2023年度は10cm角のペロブスカイト太陽電池モジュールを12枚ほど設置したが、2024年度は横浜港大さん橋の一角にスペースを設け、30cm×1mサイズのものを最終的に約80枚装着する予定。潮風が吹き、紫外線も強い過酷な環境下において、実用できるかを検証する。
ペロブスカイト太陽電池モジュールは、薄くて、軽く、曲げられるという特性を持つ次世代の太陽電池。建物の窓や壁などへの設置が期待されるほか、曇天、雨天、屋内など弱い光でも発電できることが特徴だ。
実証実験では、セルを全工程ロール状に製造するため、切れ目なく安定した加工ができる「ロール・ツー・ロール」で製造したものを使用。塗布方法が異なる2種類のモジュールを設置し、発電量などの差を確認していくという。設置における簡単着脱も追求し、巻き込みながら設置する方式と、挟み込んで設置する2つの方式を採用し、発電効率の違いなどを調査するほか、風が強い日でも耐えられるかをテストする。
現在は上半分のみが設置されており、最終的にはほぼ倍量が並べられる。発電容量は最終形態で1kw程度予定している
マクニカ 代表取締役社長の原一将氏は「どんなに優れたテクノロジーであっても実際に皆さんが使えるようにならなければ価値は生み出せない。国内でも例をみない過酷な環境下での耐久性、(モジュール)交換の可能性など、大変難しい課題に取り組んでいく」と実用化に向けた取り組みであることを強調する。
実証期間は2024年11月12日~2025年1月31日を予定。発電した電気は、設置場所の照明点灯用とするほか、実証実験中であることを掲出するデジタルサイネージの電力としても使う。デジタルサイネージの近くには蓄電池も備える。
実証実験中であることを告知するデジタルサイネージを駆動する電源もペロブスカイト太陽電池で発電したものを使用。下にある白いボックスが蓄電池
(左から)麗光 代表取締役社長の岩井順一氏、マクニカ 代表取締役社長の原一将氏、ペクセル・テクノロジーズ 代表取締役社長の宮坂力氏