情報処理推進機構(IPA)は5月7日、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」を公開した。これによると、2024年の全体的な傾向として、多くの企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進は「一部での発散的実施」にとどまっていることが明らかになった。
同レポートは、「DX推進指標」を用いて自己診断結果を提出した企業を対象に分析を行った。「2025年の崖」を目前に控えていたこともあり、1349件の自己診断結果が提出されたという。そのうち約7割が中小企業、3割が大企業だった。
同レポートでは、DX推進の成熟度を、「未着手(レベル0)」「一部での散発的実施(レベル1)」「一部での戦略的実施(レベル2)」「全社戦略に基づく部門横断的推進(レベル3)」「全社戦略に基づく持続的実施(レベル4)」「グローバル市場におけるデジタル企業(レベル5)」――の6段階で評価している。
2024年のDX推進指標における現在地の分布では、「レベル1以上2未満」が最も多く、以下「レベル0以上1未満」「レベル2以上3未満」「レベル3以上4未満」「レベル0」「レベル4以上」と続いた。企業のDX推進の成熟度はレベル0~2未満に偏っており、4以上の企業は全体の1%と非常に少ない。IPAは、DX推進において多くの企業がいまだ一部での散発的実施にとどまっていると指摘する。

2024年DX推進指標提出企業の平均値の分布表(出典:IPA)
DX成熟度における全指標の現在の平均値は1.67で、目標値の平均値である3.34まで1.67の差が開いている。経営視点の指標では、現在の平均値が1.66で目標値の平均値は3.35。IT視点の指標でも現在の平均値が1.69で目標値の平均値は3.34と、いずれも現在地と目標値において同様の差が開いていることが明らかになった。IPAは、企業が目標を達成するために「DXのための経営の仕組み」と「その基盤としてのITシステムの構築」を両輪として、DXを推進するために目標策定とアクションの実行が必要だと説明している。
また、全指標における現在値の平均値が3以上の「DX先行企業」は177社で、全体の13%に当たる。先行企業の現在の平均値は3.44で非先行企業の平均値1.40とは2ポイント以上の差がある。先行企業の3年後の目標は「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことができるレベル」を目指す企業が主である一方、非先行企業においては「全社戦略に基づく部門横断的推進」を目指す企業が主となった。
2024年版では、DX推進指標を2年連続で提出している大企業の特徴も分析している。これによると、2024年の全指標の現在の平均値は2.76で、2023年の2.54から0.22ポイント上昇している。また経営視点指標とIT視点指標においても緩やかな上昇が見られる。

2年連続提出している大企業の現在値と目標値の平均値(出典:IPA)
2年連続で自己診断を提出している大企業の各指標の2023年との差が大きいものとして、経営視点では「戦略とロードマップ」「投資意思決定・予算配分」「人材の融合」が上位に挙げられた。IPAは、DX推進のために何を変えていくかを具体化し、DXの継続的な推進のために投資の意思決定や予算配分を行い、DXを実現するための仕組みや態勢の構築に注力していることがうかがえると説明した。

2年連続提出している大企業の2024年と2023年の各指標における現在値の平均の差(出典:IPA)