2006年の目標は二桁成長を継続すること--シトリックス

聞き手:山下竜大(編集部)
構成:富永恭子(ロビンソン)
撮影:赤司聡

2006-01-01 06:00

セキュリティへの関心が高まった2005年

 フォレスターリサーチが行った2005年の日本企業の投資動向に関する調査報告を見ると「セキュリティシステムの強化」「システムマネジメントの強化」「システム統合」がトップ3となっており、このエリアのプライオリティが高くなっています。特に、2005年4月1日に個人情報保護法が本格的に施行されて以降、セキュリティに対する追い風が強くなりました。セキュリティへの投資がかなり行われたことは、国内の景気が全体的に上向きになってきたことを感じさせます。

 シトリックスの目指しているアクセスプラットフォームを提供するソリューションは、企業が抱える課題に対して、さまざまな形で活用されやすい環境にあります。ユーザーのクライアントのアプリケーションをサーバ側で統合して、全国津々浦々を回ることなく、集中してメンテナンスできるようにするなど、管理の優位性や運用の有用性向上をめざし、TCO削減の向上につなげることに大いに役立てたと考えています。しかし、昨年の段階ではまだ、実感として情報アクセスの効率化や情報アクセスインフラのコスト削減の方がニーズが多かったことも事実です。

シトリックス・システム・ジャパン 代表取締役社長 大古俊輔氏

 2005年度のシトリックスの実績は第3四半期を締めたところで、目標であった20%の増収をほぼ達成できるところまで来ています。その背景には、シトリックスのソリューションを展開する上でのネットワークインフラがあるレベルまで上がってきたということによる需要の増加があります。

 また、ネットワークインフラが整備され、どこからでも自由にアクセスできるようになると、今度はセキュリティに対するリスクも増えてくる、といった一種の相乗効果があったことも事実です。その意味で、2005年は、セキュリティへ強化に対しての世の中の関心が高かった年だと言えるでしょう。

2006年から本格的にニーズが始動

 しかし、実際のビジネスにおけるセキュリティの強化のニーズは、むしろ2006年にシフトされていくのではないかと考えています。シトリックスは現在、約1万2000社のユーザーにご利用いただいています。事例として挙げさせていただいているような大手企業のお客さまもありますが、その多くは中堅企業や大手企業の中の各部門です。このような小さい単位では、早いデシジョンで導入できますが、それを全社のインフラとして展開するとなると、数カ月で意志決定できるところまでいきません。

 特に大企業ではセキュリティ強化の指示がトップから出ても、その方法や方向性についての検討に時間がかかります。実状としては、秋口から徐々全社的に実行するコンセンサスができ、テクノロジーが評価され、方法についてもいくつかの選択肢が合意され、2006年度から、さらに加速することになるのではないでしょうか。その点でいえば、むしろ今年は実りの年で、昨年は今年のビジネスのある意味で仕込みの年だったと考えています。

企業環境の変化に対応するアクセスプラットフォーム

 業務の形態や組織に変動が少ない官公庁などであれば、シンクライアントの端末とCitrix Presentation Serverを組み合わせることによって、非常に高度なセキュリティを維持できると思います。しかし民間企業の場合、環境が変化する中でビジネスモデルを変え、それに対応して組織や部署、そして個人を柔軟に変化させていく必要があります。

 シトリックスがイメージしているソリューションは、シンクライアントにイメージされるディスクレスPCではありません。情報にアクセスする際、必要な人に対して適切な形でアクセス権限や処理の権限を与えるという発想です。したがって、ディスクを装備したPCであっても、企業が管理する情報と個人で使うアプリケーション情報を区分して、アプリケーション単位、ユーザー単位、あるいはアクセス元単位で制御できることがシトリックスのソリューションの最大の特長といえます。

 そのため企業環境の変化に対応する形での最適化やダイナミック化という意味でシンクライアントとは一線を画しています。そこでシトリックスでは、主力製品から“MetaFrame”という呼称を外し、アクセスプラットフォームを提供する「Citrix Access Suite」へと製品名を変えています。

幅広いアプリケーション対応を可能にしたCitrix Presentation Server

 またTCO削減についても一部だけではなく、管理すべきアプリケーションがすべて集中管理できなければその向上につながりません。

 Citrix Presentation Serverの考え方では、クライアントアプリケーションをサーバ側で集中管理することを前提としています。ところがこれまでは、マルチユーザーを前提にされていない古い時代に設計され、プレゼンテーションサーバに乗せられないアプリケーションがあったことも事実です。それが企業全体のITインフラとして広く使われていく上での技術的な障害でもありました。

 シトリックスでは、これを仮想化することによって動作環境を作り、かなり幅広いアプリケーション対応が可能となりました。その結果、運用管理の方の手間がドラスティックに減少し、ユーザーにとって大きなメリットとなっています。プレゼンテーションサーバにすべてのアプリケーションを対応させることができたことで、Citrix Presentation Serverが企業標準のインフラになりえたと考えています。

ウェブアプリケーション分野へ大いに期待

 2006年の目標は、二桁成長を継続することです。ただしその二桁についてもギリギリではなく、かなり余裕を持った二桁成長を目指したいと思っています。

 シトリックスというとクライアントサーバモデルのソリューションを提供する会社と思われている方が多いのですが、今年はそれだけでなく、ウェブアプリケーションのアクセスプラットフォームのソリューションも提供していくつもりです。実際のビジネス環境の中でアプリケーションサーバの問題が今後の課題となっており、この分野が大いに伸びるのではないかと見込んでいます。その大きな柱として、昨年買収した米NetScalerの製品や、Citrix Access Gatewayなどのアプリケーションネットワーキンググループのビジネスに期待しています。

 一方、もうひとつ着手したいと思っていることに、ユーザーに対するサポートやサービスのより一層の向上を目指したプロセス作りがあります。そのために社内の組織を一部改革し、昨年、カスタマーケア部門を発足させました。これをより強化し、ユーザーから直接、ご相談を受ける、あるいは直接コンタクトしていただき、ユーザーの苦情や要望が直接、我々に届くシステムとして、シームレスで高レベルのサポート体制を目指し、メーカーとして万全の対応をとれる体制を作りたいと考えています。


大古俊輔(おおこ しゅんすけ)
シトリックス・システム・ジャパン 代表取締役社長
社長に着任して以来、独立系ソフトウェアベンダーのトップとしてたいへんエキサイティングな毎日だったと振り返る大古氏。世の中は不公平だが、唯一、極めて平等なものに時間がある。時間はいくらお金を積んでも買う事はできない。だからこそ有意義な時間を過ごすことが大事だと語る。趣味はスキーと登山だが、最近ご無沙汰。好きな本は司馬遼太郎の『坂の上の雲』。明治時代の人々が、目標を見据えてひたむきに成長していく姿に心惹かれるという。

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