ソリューションを多角的に「面」で捉え柔軟な事業を展開--NEC

聞き手:山下竜大(編集部)
構成:富永恭子(ロビンソン)
撮影:赤司聡 2006年01月01日 04時00分

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着実に成長するソリューション事業

 2005年は、NEC全体がまさしく一丸となって、ITソリューションとネットワークソリューション事業の拡大に取り組み続けた1年でした。その結果、ハードウェアプラットフォームはほぼ横這いだったものの、IT関連、ネットワーク関連ともに売上は堅調に伸びています。

 また営業利益率についても、ITソリューション関連で8%、ネットワークソリューション関連で6%の伸びを実現しました。日本の産業界全体の売上高利益率が2〜3%止まりで、この厳しい戦いを強いられている要因のかなりの部分がハードウェアプロダクトであるといった背景を考えると、ソリューション事業は、現在のNECの利益を牽引する事業として着実に育ってきたといえます。

 プラットフォームを構成するプロダクトビジネスの苦戦の背景には、非常に厳しい価格競争があります。この厳しい事業環境は、今年から来年にかけても続いていくと認識しています。しかし、それらを取り入れたシステムインテグレーションやソリューションの売上が堅調に伸び続けたことは、評価できるといってよいでしょう。

「UNIVERGE」に期待されるネットワーク関連ノーハード事業の拡大

 現在、NECはネットワーク関連のソフト、SI、サービスなどのノーハード事業にかなり注力しています。

 NECのIT関連ビジネスは、コンピュータの長い歴史の中で、時間をかけてハードとソフトを分離し、ノーハード事業を確立してきました。一方、ネットワーク関連ビジネスは、さまざまなソフトが組み込まれているにも関わらず、これまでそれを切り離すことなくオールインワンで続いてきました。その結果、ノーハード事業の構図が作れておらず、この領域での新しい事業の確立が課題となっています。

日本電気 代表取締役 執行役員副社長 川村敏郎氏

 NECでは2005年、このネットワーク関連ノーハードの事業化にかなり力を入れてきました。しかしIT関連ノーハード事業がその事業売上高の約7割に達しているのに対して、やっと約3割に届いたに過ぎません。そのため、ネットワーク関連ノーハード事業の充実と収益拡大が急務となっています。

 これに関連し、NECが企業向けネットワークとして重点的に取り組んできたものにブロードバンド・オフィス・ソリューション「UNIVERGE」があります。これまで企業の徹底した生産効率化の推進によって、工場を含めた生産ラインは完全にコンピュータライズされ、1円の無駄もないようなサプライチェーン管理(SCM)が出来つつあります。ところが企業内人員の多くを占めるホワイトカラーの生産性については、まだ手付かずのままで、企業にとって大きく取り残された部分となっていました。

 UNIVERGEは、ネットワークが普及し、高速化し、モビリティも高まっている今、これらをさらに活用した新しいオフィスワークの創造とホワイトカラーの生産性を向上をめざしてNECが掲げる新しい提案です。そしてNECのネットワーク関連ノーハード事業の拡大に貢献するビジネスとして大いに期待されています。

社会インフラの領域で広がる新たなビジネス

 社会インフラシステムは、動いている間は表面的にはわかりませんが、万が一止まった時にはじめてその重大性が発覚し、システム構築の善し悪しが明らかに差となって出てくるものです。

 オープン・ミッシヨン・クリティカル・システム(OMCS)ソリューションは、NECが提唱するブロードバンドネットワーク時代の企業の基幹システムソリューションです。そのインテグレーション技術力、開発技術力、サービス技術力においてNECはナンバーワンであると自負しており、とくに社会的に非常に影響の大きいインフラにおいて、その実績は高く評価されています。

 NECの強みは、ネットワークとITの双方の卓越した技術力を持つ企業であり、オープン化に対して、日本で最も先進的な取り組みと実績を数多く重ねてきた企業でもあるという点にあります。

 現在、新しい事業展開を進めている通信キャリアや合従連衡が囁かれる放送業界は、ネットでの新しいサービスを提供しようと積極的に動き出しています。NECは、それらの社会インフラを提供する基幹システムビジネスを大きな柱とし、それに附随するさまざまな付加価値ビジネスに対しても積極的に挑戦していくつもりです。

 また、携帯電話に代表される組み込みシステムは、社会インフラのクライアント側の機能として、今後、大きく花開くでしょう。それらのほとんどはソフトウェアによって武装化されていくはずですから、これに対する組み込みソフトウェア事業が拡大することは明らかです。これはソフトウェアエンジニアリングのパワーを持っている企業にとっては、大きなチャンスです。NECはそれに対しても積極的に取り組み、リーダーシップを発揮したいと考えています。

SOAを経営の視点で実現するマネージメント・コックピット

 企業はこれまで、現場を効率化するためのIT投資についてはかなり行ってきました。一方、マネージメントの領域に目を向けてみると、意外に旧態然としてるのに驚かされます。その背景にあるのは、点在する企業内情報を利活用しきれない経営環境です。NECは、この企業情報のさらなる利活用に焦点をあわせたITによる経営の武装化の提供にも取り組んでいきたいと思っています。

 企業情報やアプリケーションを統合しようという考え方にSOA(サービス指向アーキテクチャ)があります。これが目指すのは、まさに企業における情報のより高度な利活用です。それを実現するためにはまず、企業内に発生する情報を集約する必要があります。集合化されたデータベースを共有化し、経営に必要とされる情報をリアルタイムに正しく提供して経営をサポートするためには、インフォメーションマネジメントやリアルタイムマネジメントなどビジネス・インテリジェンス(BI)の領域でのシステムが必要です。

 経営の目から見たこれらシステムは、マネージメントコックピットと称されます。また、データが集約化され、企業内プロセスのワークフローがコンピュータに定義されれば、企業の内部統制を大いにサポートするエンタープライズシステムが出来上がります。これが2006年度にNECが目指そうとしている新しいシステムです。

真のユビキタス社会のために重要なビジネスの「共創」

 ITの世界の技術力をビジブルに表現するのは難しいことですが、私は今、ソフトウェアエンジニアリングの重要性を改めて世の中にもっとアピールしなければならないと思っています。また企業だけでなく、ITとネットワークをさらに活用すれば、もっと安心、安全な社会生活に寄与できるはずです。それが真のユビキタス社会と言えるのではないでしょうか。そのために我々がやるべきことは山のようにあります。

 また新しいユビキタス時代の法制度について見直さなければならない時期であるとも言えるでしょう。その意味では、一企業のビジネスの問題ではなく、今後5年10年に対する国家政策が非常に重要になると考えています。国家政策に呼応する形で市民生活が変わり、企業が変革していきます。この大きなトランジッションにともなうエネルギーが、さまざまななサービスやビジネスを作り上げていくのです。

 しかしビジネスの創造は一人ではできません。私は「共創」という言葉を使いますが、お互いに知恵を出し合って、ビジネスを造り出していくにぎわいの場が、これからの日本にとってはとても重要だと思っています。


川村敏郎(かわむら としろう)
NEC 代表取締役 執行役員副社長
いつも思っていることは「挑戦」と「創造」、そしてもっと大切なことは「対話」だと川村氏はいう。プロジェクトマネジメントの失敗は技術力ではなく、すべてユーザーとの「対話」不足に帰着すると言い切った。最近、読んだ本に「会社は誰のものか」(吉田望著 新潮社)がある。この本のオビには「志なき株主はいらない!」とあるが、氏も投機目的のインべスターに対して大いに疑問を抱くという。こんな時代だからこそ企業がよって立つ基盤が何かを知り、企業としての立ち居振る舞いを自覚することが企業経営として重要だと語った。
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