SAS Institute Japanは6月8日、今年で5回目となるビジネス・インテリジェンス(BI)をテーマとした同社のプライベートカンファレンス「SAS Forum Tokyo 2006」を都内ホテルで開催。企業のCEO(最高経営責任者)、CIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任者)など、約1000名の来場者に国内外のBI活用事例や企業におけるBIの効果的利用を紹介した。
基調講演に登場したSAS Internationalの社長であるArt Cooke氏は、まずは「“時間(t)”はインテリジェンスである」ことを強調した。これはここ数年、同氏が必ず講演の中で紹介するメッセージだ。Cooke氏は、「データの分析は、迅速かつ簡単に実現することが必要だ。そのためには“時間”というものが非常に重要になる」と言う。
このメッセージにはデータをインテリジェンスな情報に変化させるための時間を短縮するのがSASのソリューションだという同社の思いが込められている。
SASのBIソリューションの優位性をCooke氏は、「SASでは、2005年に16億8000万ドルを売り上げており、その約24%にあたる4億ドルを研究開発費に費やしているおかげ」と話す。同氏はまた、「SASは、2006年で会社設立30周年を迎えており、豊富な経験も持っている」と話している。
BI分野において、すでに豊富な経験と実績のあるテクノロジを有し、次世代BI戦略である「Beyond BI」を提唱してきたSASが、2006年に注力する分野が「パフォーマンス・マネージメント」の分野となる。
SASのパフォーマンス・マネージメントは、データの抽出から変換、展開、そして分析、予測までを統合したBIプラットフォームである「Enterprise Intelligence Platform(EIP)」を中核に、「SAS Human Capital Management」「SAS Financial Management」「SAS Activity-Based Management」「SAS Strategic Performance Management」 などで構成される水平型のIntelligence Solutionと、通信、金融、流通、製造などの業種別に提供される垂直型のIndustry Solutionを完全に統合して実現される。
Cooke氏は、「パフォーマンス・マネージメントを実現するためには、フロントエンドツールだけでなく、バックエンドのテクノロジと完全に連動させることが最大のポイント。企業のデータにどれだけ結びついているかが重要になる」と話している。
ここまでの内容は、2006年5月16日〜18日の3日間、スイス・ジュネーブで開催された「SAS Forum International Geneva 2006」での発表とほぼ同じ内容だ。今回のSAS Forum Tokyo 2006では、同社のBI構築支援プログラム「Business Intelligence Competency Center(BICC)」についても詳しく紹介された。
Cooke氏に続き講演に登場したSAS Internationalのプロフェッショナルサービス部門 担当副社長であるGloria J. Miller氏は、同氏が中心となって執筆した書籍「Information Revolution」および「Business Intelligence Competency Center」の内容に基づき、企業の情報基盤を革新のレベルに到達させる実践的なロードマップを提示した。
Miller氏は、「これまでBIの価値はテクノロジ寄りだった。しかし現在では、いかにビジネスの価値を向上させるかに注目が集まっている。テクノロジ中心のアプローチでは、IT担当者とビジネス担当者の間にギャップができてしまう。このギャップを埋めるのがBICCが目指すゴールだ」と話す。
これまでSASのソリューションは、EIPを中核としたテクノロジに優位性があった。たとえば、Information Revolutionの中では、個人レベルでの情報統合、部門レベルでの統合、そして企業レベルで情報を統合し、さらに最適化のレベルを経て革新的なレベルに到達するという5段階のステップを提唱している。
このテクノロジ中心の情報統合は、3段階の企業レベルの情報統合までには有効だが、それを最適化のレベル、革新的レベルまで到達させるには、テクノロジだけでは十分ではない。そこで、EIPをはじめとする「インフラ」はもちろん、「人」「プロセス」「企業文化」までを含めた情報革命が必要になるというのが、Miller氏が書籍の中で主張している内容だ。
SASでは、インフラ、人、プロセス、企業文化の4つで構成されるこのモデルを「Information Evolution Model(IEM)」と位置づけており、これを具現化する仕組みがBICCとなる。Miller氏は、「BICCにより、企業がこれまで構築してきたさまざまなプラットフォームや既存の資産を最大限に有効活用しながらBIソリューションを実現することができる」と話している。
BICCを実現するためには、まず企業内でのオリエンテーションを実施し、すでに構築されているBI環境との比較を行い、IEMに基づいて組織化していくことが必要になる。日本国内では、すでにNTTドコモが30人程度のシステム担当者やマーケティング担当者などで構成されるBICCを構築しているという。